2019年11月の朝、mi-molletで更年期などの記事を執筆していた医療ライターの熊本美加さんが、山手線の車内で突然心肺停止になりました。熊本さんは、居合わせた乗客の方と浜松町駅の駅員によるAEDや心臓マッサージ、運び込まれた急性期病院の救命措置によって、奇跡的に命を取り留めました。

熊本さんは毎年健康診断を受けていて、血圧やコレステロール値は正常範囲。お酒は飲むけど食事には気を使っていて、適度に運動もしていたと言います。それなのになぜ? 予兆はなかったのでしょうか。

 

【漫画】「健診受けてるから大丈夫」が命取りに...突然の心肺停止から搬送されてどうなった>>

「胸の真ん中あたりがモヤモヤとうずくような、不気味な痛みはあったんです。山手線の電車の中で心肺停止で倒れる2週間前から、朝ドラの『おしん』の再放送を見ている時に限って、それはやってきたんですね。でも、胸を押さえながら横になっていると、「おしん」が終わる頃には痛みはすっかり収まって、何事もなかったかのように1日を過ごしていました」(熊本さん)

「更年期かストレスのせい」と思い込んでいた


日本人の平均閉経年齢は約51歳で、更年期とは閉経前後の各5年間をさします。女性ホルモンが急速に低下するこの期間は、個人差はあるものの、心身共にいろいろな不調が起こります。

「アラフィフの私は、まさに更年期真っただ中。何か体調不良があると『更年期のせい』と決めつけていました。でも、さまざまな更年期症状の中に、他の病気が潜んでいる可能性があるんですよね。実際に私の友人の女性医療専門医の関口先生の外来に更年期障害を訴えて受診した人4人に1人は別の原因でした。甲状腺機能異常症状や逆流性食道炎、他には白血病、悪性脳腫瘍、貧血やうつ病・慢性疼痛症等思わぬ疾患に辿り着くケースもあります。更年期の女性が他の病気にならないという保証はないのです。胸の痛みが出ても数分で治ったのも、病院に行かなかった理由です。無症状の時に病院に行くのは、時間とお金の無駄遣いとそのときは思ってしまったんですね」(熊本さん)

 


受診した方がいい危険な胸の痛みとは?


胸がドキドキする、モヤモヤとうずくような痛みがある⋯⋯ 。その症状を「更年期かストレス」と思っていた熊本さん。でも、実際には「冠攣縮性狭心症」でした。その痛みを放置した結果、ある朝心臓の血管である冠動脈が著しく痙攣性の収縮をし、心臓の筋肉が虚血状態に陥って、心肺停止に至ったと言います。

健康診断や人間ドックでも発見しにくいという「隠れ心臓病」。すぐに受診した方がいい危険な痛みの見分け方はあるのでしょうか。

「私は、心臓は左側と思い込んでいました。胸の真ん中あたりが痛んだので、心臓病だと疑わなかったこともあるのですが、実際には心臓は中央にあり、左に傾いているだけです。痛む場所も広範囲にわたります。そこで私の主治医である東京都済生会中央病院の鈴木健之先生に教えてもらった、受診した方がいい胸の痛みをご紹介します」(熊本さん)

 
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