いつも通りの夏の日曜日に、突然の脳卒中で倒れたのは、48歳2児の母でありフリーライターの萩原はるなさん。救急車で急性期病院に運ばれ、予兆も準備もまったくないまま入院生活が始まりました。

 

なぜ自分に、こんなことが起こったの? 後遺症は? 突然の事態に自分なりに向き合いながら、治療やリハビリに励む日々をレポートします。
今回は、リハビリ入院生活をともにする、まわりの患者さんや病院スタッフの方のお話です。

 

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徘徊するおばあさまに、夜な夜な廊下を疾走する電動車イス


リハビリ病院での入院は、数ヵ月という長きにわたるもの。私は8月から12月まで、じつに1年の3分の1をリハビリ病院で過ごすことになります。

こうなると「入院」というよりも、まさに「生活」そのもの。患者さんはもちろん、いろいろお世話になる看護師さん、担当ドクター、リハビリ担当の方々には毎日のように顔を合わせることになります。

看護師さんたちは、いつも本当に忙しそう。けれども困ったことやお願いごとがあると、親身に話を聞いてくれるのでした。

患者さんは個性的な人がたくさんいて、なかには仲が悪かったり、良すぎてはしゃぎすぎてみんなに煙たがられたりと、まあいろいろあります。

とくに悩ましいのが、「人との距離の取りかた」。たまには他愛もないおしゃべりがしたいときもあるものの、一人でいたいときももちろんあって、そのさじ加減が難しい!

ある看護師さんによると、「脳の損傷のせいで、人との距離の取りかたがわからなくなるケースもある」らしく、やたらと距離を詰めてくるおじさまも……。私は近寄らないようにしていたのですが、同室の30代女子はいつも捕まっており、おじさまの退院時には泣いて別れを惜しまれたそうです。

リハビリ病棟に入院中の患者さんは、40代以降がほとんどで、70代、80代以上の大先輩たちも多くいます。夜ごとに「キィ……、キィ……」、と車イスをきしらせて廊下を徘徊するおばあさま(知らぬ間に背後にいたときは、肝を冷やしました)や、電動車イスで病棟を疾走するおじさま(ヒュンヒュンと電動車イスの音が近づくたびに、私の頭の中はF1のテーマソングでいっぱいになるのでした)、夜な夜なテレビを見ながら大爆笑するおばさまなど、じつにバラエティ豊か。

ただ、30代、40代の若い患者さんたちは、みんなほどよく距離をキープしながら適度にコミュニケーションもとり、いい感じに入院生活を送っていました。

多くの人が歩行練習や車イスの操作練習に励む広い廊下。しかし、電動車イスならば、毎日毎日練習する必要はないような……? ちなみにそのおじさまは、とても「情報通」でした。
4人部屋で、常に病室のドアは開いている状態。隣には男性患者たちの病室がありました。ベッドを仕切るカーテンは、基本的に閉めっぱなしの人がほとんど。