日本の学校が得意とする「多数決」の利点


正解のない授業があることを知ったナージャさんが次に体験したのは、その正反対ともいえる授業方法を採り入れている日本の小学校。そこでは、ロシアと同じように生徒が一人もしくは男女ペアで横並びに座り、先生が一方的に教えるという授業が展開されていました。一方で、ロシアの小学校との細かな違いもありました。

「違いは、みんなで多数決をよくするところにあった。すごくいい意見を持っている人がいてもそれが選ばれないことがあり、代わりにみんなで決めた当たり障りないものが選ばれたとしてもみんな満足そうにしていた。ここでは、『いい』よりも『みんなが選んだ』が重要だった」

ここだけを読むと、日本人は自分の意見を持たない情けない民族だと捉えてしまいそうですが、ナージャさんはこの習性の良い面にもしっかり目を向けています。

「これが、不満を生まない理由につながり、みんなポジティブに決めたことに取り組んでいた。そうか、みんなで決めるとその後のやる気に関係してくるのか。このやり方も確かに面白いと思った」

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座席の在り方は、教え方の方針を示している


その後、ナージャさんはアメリカ・ウィスコンシン州の小学校へ転校。ここでは、円状に並んだ席へ座ったり、真ん中のソファでリラックスして国語の朗読を聞いたりという風に、授業の内容に応じて座り方を変える方式を体験しました。

 

このように、5カ国の小学校で全く異なる席の配置を経験した彼女は、ひとつの結論を導き出します。

「特に理由がないように見える座席の在り方は、実は教え方の方針を示している。真剣に聞いてほしいのか、発言してほしいのか、みんなで意見をまとめてほしいのか。正解はない。(中略)児童の性格や教えたいことに合わせて座り方をシフトさせれば、いろんなやり方があることを子どもたちにも教えることになり、将来につながっていくかもしれない」