【医療逼迫】背景にある日本の特殊事情。圧倒的に足りない2つの「受け皿」とは_img0
写真:Shutterstock

介護施設に入所している人が病気になった場合、病院に移送されることになりますが、こうした患者はもともと要介護ですから、入院生活においても、24時間のケアがが必要となります。疾患が慢性化すると、施設に戻ることができなくなり、事実上、病院が介護施設の役割を果たすことになります。日本の入院患者において長期ケアを必要とする人は何と20%に達しており、こうした人たちに「退院して欲しい」と伝えても、受け入れる先はなかなか見つかりません。

 

同じような状況になっているのが精神疾患の病棟です。

先進諸外国では、精神疾患を抱えた患者については、入院させるのではなく、社会の中で共生することで治療していくことがスタンダードとなっていますが、日本では企業や地域社会などにおいて、こうした人たちをケアするインフラが整っておらず、大量の患者が病院に入院しています。日本のベッド数のうち約20%が精神疾患で占められているのですが、これは先進諸外国と比較すると突出して高い数字です。

当然のことですが、精神的な疾患を抱えた患者を、十分な受け入れ体制がない中で簡単に退院してもらうわけにはいきませんから、この部分においても医療リソースが固定化されてしまいます。

整理すると、日本の病院のベッド数のうち4割が、本来、別の枠組みでケアすべき患者で占められており、これが医療の負荷を大きくしていることが分かります。

残念なことに日本は欧米各国と比較して生産性が低く、社会全体として、介護や精神的なケアという部分に大きなコストをかけることができません。その結果、そのシワ寄せが医療に集中していると考えることも可能でしょう。

これは医療単体の問題ではなく、日本の社会保障制度全体の問題ですから、解決は簡単ではありません。もちろん現在の医療制度の中で、逼迫を防ぐために改善できる点はたくさんあるでしょうし、そうした対策は迅速に行うべきです。しかしながら、逼迫の背景には、こうした構造的な事情があるという現実について、私たちはよく理解しておく必要があります。

参考資料:日本医師会『病床数の国際比較』

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