政府が食品価格の上昇を抑制するため、小麦の売渡価格を据え置くことを決定しました。小麦は多くの食品の原材料に使われており、生活に密着した食材ですが、家計にはどの程度の効果があるのでしょうか。

日本は国内で消費する小麦の約9割を外国から輸入しています。小麦は食パンやパスタの原料となっているほか、ラーメンやうどんといった麺類、ケーキや和菓子、天ぷらなど、様々な用途に使われています。

小麦の価格が上がると食卓に大きな影響が及ぶため、小麦は政府が一括して貿易を管理する仕組みになっています。

日本が輸入する小麦はすべて、商社を通じて政府が購入しており、政府は買い付けた小麦を一定の価格で国内の事業者に売り渡しています。年に2回、4月と10月に価格改定が行われますが、基本的に売り渡し価格は市場動向に沿って決まるので、海外での価格が上昇すると、半年のタイムラグを経て国内の価格も上がっていきます。

上がり続ける小麦価格に政府が抑制策。家計への影響はどこまで期待できる?_img0
小麦の流通の概要 農林水産省「輸入小麦の政府売渡価格について(価格公表添付資料)」(令和4年3月)より抜粋。

コロナ以降、政府の輸入価格は大幅に上昇しており、それに伴って国内の売り渡し価格も上昇が続いてきました。次の価格改定は10月ですが、予定通り、価格の改定が行われれば、現時点からさらに2割近く上昇すると見込まれています。すでに、パンやパスタなど小麦を大量に使用する食品の値上げが行われており、消費者は生活の高騰に苦慮しています。さらに小麦価格が上がると、秋以降に再値上げ、再々値上げが実施される可能性が高くなり、家計を直撃することになります。

 

こうした事態を回避するため、政府は公費を投入し、価格を据え置く措置を決定したわけです。

小麦の売り渡し価格が据え置かれた場合、一部のメーカーは再値上げを回避する可能性が高くなりますが、家計全体への効果という点ではそれほど大きなものにはならないでしょう。その理由は、食品全体に占める小麦粉の割合は、実はそれほど高くないからです。