8月2日、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長ら専門家有志が開いた記者会見の様子。政府に対する提言の中で、「第7波」の感染爆発を受け、新型コロナの発生以来続けてきた対応の抜本的な見直しを求めた。写真:つのだよしお/アフロ

新型コロナウイルス「第7波」の感染拡大に歯止めがかかりません。一部の医療機関では、患者が受診できない状態となっており、医療崩壊に近い状態であるとの指摘もあります。日本には、貧富の差に関係なく、誰でも医療機関を受診できるという、世界に誇るべき医療制度があります。しかし、この素晴らしい制度は、医療従事者の過重労働で支えられているという面があり、制度の維持が限界に来ています。

 

日本では、保険料の滞納さえなければ、原則として3割の自己負担で病院にかかることができます。より高額な費用がかかる疾患については、一定額以上についてはすべて公費で負担するという仕組みもあり、患者はごくわずかな自己負担で高度な医療を受けることが可能です。

私たちは、医療制度を維持するため、毎月、一定額の保険料を支払っています。正確な料率は職種によって異なりますが、おおよそ収入の1割程度と考えればよいでしょう(サラリーマンの場合には会社が負担分を折半しています)。例えば月収が30万円の会社員であれば、毎月、約1万5000円を支払っている計算になります。

一部の人は、自分はほとんど病気になっていないので、保険料を支払うのはムダだと考えているかもしれませんが、そうではありません。それどころか、この程度の保険料で何とかなっているのは、むしろ画期的なことと考えた方がよいでしょう。月1万5000円という情報だけでは、あまりイメージが湧かないかもしれませんから、もっと具体的に説明しましょう。

若いうちは、病院にいくケースはそれほど多くないと思いますが、仮に骨折して入院すると、状況にもよりますが、10〜30万円の治療費がかかります。しかし、日本には公的保険がありますから、実際に支払う治療費は1〜3万円で済みます。このほか、歯医者に行ったり、インフルエンザで受診するなど、1年のうち何回かは病院に行く人が多いと多いと思います。もし保険がなければ、いつも病院で支払っている金額の3倍を自己負担するわけですから、累積ではかなりの金額になってしまいます。

そして極めつけが、中高年以上になると罹患確率が一気に上昇する三大成人病でしょう。

日本人の死因のトップはがん、2位は心疾患、3位は老衰、4位は脳血管疾患となっており、がん、心疾患、脳血管疾患で50%を超えています。老衰で亡くなる人はわずか10%ですから、多くの人が三大成人病で亡くなり、そうでない人も大半が病院の世話になってこの世を去ります。

がんで長期の闘病となった場合、治療費だけで(食事などは別)総額が1000万円を超えることは珍しくありませんし、脳梗塞による短期入院でも200〜300万円の治療費がかかることはザラにあります。つまり、ほとんどの人が、一生のうち1回は、大病を経験する可能性が高く、これを自費でカバーするためには、生活費とは別に1000万円程度の貯金が必要となります。1000万円くらい自分で出せると自信をもって言える人は、富裕層の人だけではないでしょうか。

 
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