いつも通りの夏の日曜日に、突然の脳卒中で倒れたのは、48歳2児の母でありフリーライターの萩原はるなさん。救急車で急性期病院に運ばれ、予兆も準備もまったくないまま入院生活が始まりました。

利き手を使わず料理、運転、パソコン...退院に向けた最後のリハビリ【48歳・脳卒中闘病記】_img0
 

なぜ自分に、こんなことが起こったの? 後遺症は? 突然の事態に自分なりに向き合いながら、治療やリハビリに励む日々をレポートします。
今回は、退院後の目標に掲げていた「料理」「仕事」「車の運転」のリハビリについてのお話です。

 

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4ヵ月ぶりにつくった「わが家のベーコンエッグ」


11月に入り、夕方になるとあっという間に暗くなるようになったある日のこと。「じゃあ、退院は12月10日にしましょうか」と、主治医のお許しが出ました……!

やった〜。これで、クリスマスと年末年始は家族で過ごせる!

けれども、7月に倒れて以来、ずっとドクターや看護師さんたちの庇護下で生活していた私。たったひとりで社会に放り出されて(比喩です)、本当にやっていけるのでしょうか。

とはいえ、一生病院でリハビリをしているわけにはいきません。社会復帰を見据えて、さらに頑張らなければ!

退院後の目標に掲げていたのは、「料理」「仕事」「運転」の3つでした。まずは「料理」。とりあえずAmazonでポチって夫に持ってきてもらった「片手料理の本」を熟読します。けれども悲しいかな、それは左手麻痺の、「右手は使える人のための本」らしく、あんまりピンときません。

かくなるうえは、右手があまり動かない状態で、料理ができる方法を模索していくしかない……!?

担当の作業療法士さんにはもともと、「もっと右手が動くようになってから、料理にトライしたい」と伝えてありました。でも、どうやらそんな猶予はなさそうです。というわけで、まずは目玉焼きから調理リハビリをスタート。

利き手を使わず料理、運転、パソコン...退院に向けた最後のリハビリ【48歳・脳卒中闘病記】_img1
弱火でふたをせずにじっくり焼くのがわが家流(卵特集をつくったときに、料理家の先生に教わった)。黒コショウを振ったベーコンエッグなんて、何ヵ月ぶりに食べたことか!

卵は左手でヒビを入れ、右手をなんとか添えながら割ることができて感動。なにせ、育ち盛りの子どもがいるわが家では、毎朝の卵料理は必須です。無事に割れてよかった! でも、焼きあがった卵を片手でお皿に移すのは、思った以上に大変。当分、子どもたちに手伝ってもらう必要がありそうです。

その後、マッシュルームソテーを添えたハムチーズオムレツ、じゃがいものコンソメバター煮、トマトとチーズのグリル(ニンニクとケイバーを入れるのがポイント)と、いつもつくっていた料理のうち、簡単なものを作業療法室で実践。

うん。硬いものを切ったり細かいみじん切りなんかは無理だけど、料理するものを選べば、左手中心でなんとかなりそう。退院前によく切れる包丁と左手用のハサミ、そしてみじん切り用のチョッパーをネットで買っておこう、と心に決める私。

何より「自分でつくった料理」が食べられたことが、心底うれしかったのです。