「あなたの結婚生活は、幸せですか?」

この質問にまったく躊躇いなく「はい」と答えられる夫婦はどれだけいるでしょう。
おそらく多くの方が即答はできず、言葉を濁したり、あるいは驚くべき夫婦事情を口にすることもあります。

「婚姻制度」が定められたのは、実は120年以上前の明治時代。社会も価値観も変化していく中、多くの夫婦が様々な問題を抱えているのが現実です。

この連載では、現代の男女が抱える問題について取材。結婚生活は山あり谷あり。そのとき人は、どのような選択をするのでしょうか?

 

今回お話を伺うのは、自らシングルマザーを選択し、最近女の子を出産されたばかりの千尋さん(35歳)。

千尋さんは「私にとって結婚は必要ない」と判断し、パートナーの男性と細かく体裁を整えた上で体外受精で妊娠されました。彼女はなぜ、それほど強い意志と希望でシングルマザーとなったのか? その経緯をお話いただきます。

取材者プロフィール千尋さん(仮名)35歳
職業:自営業
家族構成:0歳3ヶ月の女の子
 
 


娘の父親とは、一度も恋愛関係になったことはない


すやすやと寝息を立てる小さな赤ちゃんを抱っこ紐に入れて、千尋さんはにこやかにカフェに現れました。

以前、「実は結婚せずに出産したんです」と明るく打ち明けられた時は驚きましたが、彼女の自由な発想と行動力は非常に興味深いもので、今回取材にご協力いただきました。

「1人で娘を育てるのは、やはり想像より大変なこともたくさんあります。でも、結婚をせずに産むという選択をして、私は本当によかった。何というか、自分にすごく”しっくり”きていると思うんです」

満面の笑みで娘さんの身体をそっと撫でる千尋さんの言葉に嘘はなく、とても幸せそうに見えます。

千尋さんは結婚はしていませんが、父親である男性は娘さんを認知しており、養育費などの経済面のサポートはもちろん、週1回程度で交流もあり、非常に良好な関係だそう。

こうした取り決めも、なんと妊娠前から建設的に話し合い、安定期に入ったタイミングで弁護士を交えて公正証書を作成したと言います。

さらに驚くことに、この父親である男性と千尋さんは、一度も恋愛関係になったことはなく、完全に子どもを作るためのパートナーなのだそうです。

「びっくりされると思いますが、彼とは本当に、セックスもキスも、手を繋いだことすらないんですよ。恋愛感情を持ったことも一度もありません」

そう言って、お茶目に笑う千尋さん。令和時代の女性ならではの自由な意志をお持ちという印象ですが、ここに至るまでには様々な経緯があったそうです。