新体操日本代表(フェアリージャパンPOLA)の監督を17年間務め、2017年の新体操世界選手権では、団体総合で42年ぶりのメダルに導いた山﨑浩子さん。自身も新体操選手として1984年のロサンゼルスオリンピックで個人総合8位に入賞するなど、輝かしい功績を残しています。現在は後進の指導に力を入れる山﨑さんですが、このほど上梓した『筋トレより軸トレ!運動のトリセツ』では、実際に新体操日本代表への指導でも取り入れた「4(フォー)スタンス理論」を大公開。スポーツ指導者だけでなく、日常生活にも取り入れたいメソッドを分かりやすく紹介しています。そこで今回は山﨑さんにインタビューを敢行。本書のメイントピックでもある「軸」について、お話をお聞きします!

 

山﨑浩子(やまさき・ひろこ)さん
元日本体操協会 新体操強化本部長。1960年、鹿児島県生まれ。鹿児島純心女子高校時代に新体操を始め、インターハイ、国体で団体優勝。東京女子体育大学に進学後、全日本選手権5連勝。84年にはロサンゼルス五輪に出場し、8位入賞。同年引退。引退後は後進の指導にあたる傍ら、テレビ番組「クイズダービー」に出演し、スポーツライターとしても活躍。2004年に新体操の強化本部長に就任。21年まで務めた。

 

「軸」を意識すると身のこなしが軽やかに


――山﨑さんが教えていらっしゃる「4(フォー)スタンス理論」は、「実践すると若く見える」という効果に思わず惹かれました……。その理由を教えていただけますか?

山﨑浩子さん(以下、山﨑) 「4スタンス理論」というのは「軸」に着眼点を置いた運動理論なんですね。私が新体操の選手を指導する際に取り入れた理論で、「正しい体の動かし方は4タイプある」という考え方です。すべてに共通するのは体の「軸」を意識するということ。自分の体の軸を意識して動くと身のこなしが軽やかになり、周りからは若々しく見えるというわけです。

――それだけ普段私たちの体は「軸がぶれている」ということでしょうか?

山﨑 軸がぶれているというよりは、軸を意識する機会がない、という方がしっくりくるかもしれませんね。今はみんなスマホとかパソコンを見ていて、首が前傾していることが多いですが、首や腰が痛くなっても「姿勢を正す」だけで軸までは意識しません。私が指導をした新体操チームの選手たちも最初は軸を意識して正しく立つことが難しい選手もいました。新体操は、可動域はもちろん、審美性も問われる競技なので、正しい軸を意識することはとても重要なんですね。ちなみに正しい立ち姿勢とは、足底の土踏まず、骨盤、頭が正しく軸でつながっているのがポイントです。

土踏まずが地面に対して水平に伏せられているイメージを持ったら、そこに骨盤、頭を乗せて立つ。こうすることで頭の位置がブレなくなり、脳が安定して柔軟性とパワーを手に入れることができる。


62歳で軽々三点倒立!? 秘密は「軸だけ」


――山﨑さんのYouTube(【ジクスタ】Hiroko's JIKU studio)も拝見したのですが、正しく立つどころか、三点倒立をサラリとこなす姿に感動しました。普段から相当、体を鍛えていらっしゃるんですか?

山﨑 じつはあまり運動しないんですよ……。汗をかくのも嫌いなくらいで(笑)。

――えっ?

山﨑 みなさんに驚かれるんですけど、筋トレもなにもしていなくて。今私は62歳ですが、三点倒立は家で3回練習したらできました(笑)。即興のダンス動画もYouTubeに上げているんですけど、それは練習なしで撮影したんですよ。

YouTubeチャンネル「【ジクスタ】Hiroko's JIKU studio」より、見事な開脚支持と三点倒立。62歳とは思えない、山﨑さんの身体能力の高さに圧倒……!

――あまりに驚異的すぎて言葉が出ません。そして山﨑さんが還暦をすぎていらっしゃることを忘れていました……。

山﨑 私がこれだけ動けるのは、軸を意識した生活を送っているから。ただそれだけなんです。もちろん、指導はしているので、運動とまったく無縁な生活ではないけれど、現役を退いてかれこれ三十数年。若い頃に比べれば筋肉量の違いは明らかです。でも、これからご紹介するタイプに合った軸の乗り方をしていれば、体はスムーズに動いてくれるんですね。だから日頃やっていることといえば、軸を意識して正しく立つ・座る・歩く、この3つだけです。疑っていらっしゃるかもしれませんが、嘘じゃありませんよ(笑)。