中性脂肪の数値が高いとどうなる?相関関係と因果関係の違いに注意【医師の解説】


山田:そうですね。血液検査の多くの項目については、食事を抜く必要はありません。ただ、中性脂肪は健康診断の検査項目に含まれ、また食事の影響を受けやすいので、「健康診断の前は食事を抜いてきてください」と言われるのです。
「食事を抜いて空腹であるにも関わらず、血液の中に中性脂肪が多い状態は病気と関連がある」と知られているので、こうした検査が行われています。

 

編集:なるほど。

山田:一般的には、この空腹時の中性脂肪の値が高ければ高いほど、動脈硬化に起因する心筋梗塞、脳梗塞といった血管の病気のリスクが高くなるという相関が知られています。また、主に遺伝的な原因で中性脂肪の値が1000を超えるような場合には、膵炎(すいえん)という、膵臓に炎症が起こる病気のリスクに繋がることも知られています。

編集:動脈硬化がさらに色々な病気に繋がる、というイメージがあります。中性脂肪の数値の高さと、心筋梗塞などの病気との関係は、どの程度関連性があるのでしょうか。

山田:そうですね、かなり密接に関連していると言われています。ただ、ここで注意したいのが、中性脂肪の数値の高さと心筋梗塞などの病気にはあくまで関連性があるだけで、因果関係が証明されているわけではない、ということです。

編集:ラジオでもよく説明してくださる、「相関関係」と「因果関係」の違いですよね。

山田:はい。中性脂肪の値の高さと、心筋梗塞などの病気にはあくまで関連性があるだけで、間に何か他の因子が挟まっている可能性も考えられます。したがって、中性脂肪の数値が高いからといって、数値を下げる治療をして、実際に心筋梗塞や脳梗塞などを減らせるか、というのはまた別の問題なのです。
中性脂肪の値の高さと心筋梗塞や脳梗塞の間に、何か他の因子が挟まっている場合には、その因子を解消しない限り、心筋梗塞を減らせない、ということになります。

「中性脂肪を減らす治療をして病気を減らせるか」は、介入試験と呼ばれるタイプの研究で証明することができます。
実は最近、中性脂肪と心筋梗塞などの病気に関する大きな研究が報告されましたので、ご紹介しますね。