円安が進む対ドル円相場。10月21日には一時1ドル151円台を記録した。写真:ロイター/アフロ

ここ半年の間に日本円が大幅に下落したことを受けて、円安のデメリットについて多くの議論が行われています。為替の変動には常にメリットとデメリットの両方があり、円安になったからといってデメリットばかりというわけではありません。円安メリットとしてもっとも大きいのは、輸出企業の業績拡大やインバウンドの増加であり、こうしたメリットは来年あたりからより身近に感じられるようになってくると思います。

しかしながら、日本経済の現状を考えると、円安が長期化した場合、デメリットがさらに大きくなってくるのも事実です。円安が長期化する最大のデメリットは、何と言っても日本から人やお金が海外に流出することでしょう。

 

現在、日本国内では約173万人の外国人労働者が働いています。農業や建設、介護、飲食店などにおいては、外国人労働者がいなければ業務が回らないと言っても過言ではありません。日本で働く外国人はやはりアジア人が多く、ベトナム人が約45万人、中国人が40万人、フィリピン人が19万人となっています。コロナ危機で入国制限が行われていることから、来日者数は減っていますが、日本の産業界が引き続き外国人労働者に依存した状態であることに変わりはありません。

日本では長く低賃金が続き、日本の労働者は諸外国と比較して高い賃金を得ることができていません。特に上記の分野においては、日本人はなかなか求人に応募してこないのが現実です。

本来であれば、日本国内の賃金を上げる努力を行ない、日本人を雇用した方が圧倒的に経済へのメリットがありますが、日本企業が選択したのは、より安い賃金で働いてくれる外国人労働者を大量に受け入れるという、かなり安易な方法でした。

日本円の価値が高かった昨年までは、所得が低い国から見れば日本の賃金はまだ高く、日本に出稼ぎに来るメリットがあったと言ってよいでしょう。ところが今回の円安はこうした状況をすべて変えてしまいました。

 
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