10月28日、閣議決定した総合経済対策について会見する岸田文雄首相。写真:代表撮影/ロイター/アフロ

急激な物価上昇や円安に対応するため、政府が29兆円という大規模な総合経済対策を閣議決定しました。当初は25兆円という規模が想定されていましたが、与党内の反発を受けて急遽、29兆円に増額されるというドタバタ劇がありました。一部からは金額ありきの単なるバラマキではないかと批判する声もありますが、今回の経済対策についてはどう考えれば良いのでしょうか。

 

全世界的な資源価格・食料価格の高騰や、急ピッチで進む円安によって、輸入品を中心に多くの商品価格が上がっています。一方で、賃金はほとんど上がっていませんから、多くの国民が生活が苦しくなったと感じていることでしょう。今回、政府が閣議決定した総合経済対策は、物価高騰や円安に対応するためのものです。

政府はこれまで、ガソリン価格の補助や小麦価格の据え置きなどを行ってきましたが、電気代やガス代については特に対策は講じていませんでした。電気代やガス代は、燃料や原料となる天然ガスや石油の価格に連動して動きます。これらのほとんどは輸入されていますから、円安によって料金が急ピッチで上がっています。

このままでは、来年にもう一段の価格上昇となる可能性が高く、政府は電気代やガス代に対して一定額の補助を行うことを決定し、今回の閣議決定となったわけです。

電気代やガス代補助に加え、今回の対策では、岸田政権が以前から提唱してきた新しい資本主義を実現するための施策や、インバウンドや輸出の強化など、円安メリットを生かす施策も盛り込まれました。民間も含めた事業規模の総額は70兆円を超える見通しです。

このうち、実際に政府が支出する額は29兆円ですが、つい先日までこの金額は25兆円を軸に調整されていました。ところが自民党内からこの金額に対して反発する声が上がったことから、突如、金額が上積みされ29兆円という数字に落ち着きました。

現在、多くの家庭が、電気代やガス代の値上がりに苦慮していますので、今回の対策には一定の効果があると思われます。しかし電気代やガス代の補助というのは、料金が上がっていく中で、その上昇分を抑制する効果しかありません。

 
  • 1
  • 2