ここ20年、社会のIT化が急ピッチで進み、リーマンショックなどの一時期を除いて、経済は順調に成長してきました。一連の成長の牽引役となってきたのは、こうしたネット企業群であることは明らかですが、特定の産業がいつまでも急成長を続けることはあり得ません。時代は常に変化するものであり、IT化を通じた世界経済の成長も、そろそろ限界に来ているのではないかという指摘が出ていました。

イラスト/Shutterstock

こうしたところにコロナ危機やロシアによるウクライナ侵攻などが加わり、全世界でインフレが深刻化。これに対処するため米国の金融当局は金利の引き上げを行い、結果的に世界経済が不景気になりかかっていると解釈した方が自然でしょう。つまり、米国の利上げはあくまできっかけに過ぎず、20年続いた好景気とIT化の流れはひとつの節目を迎えた可能性が高いのです。

 

特にネット企業は、現在の業績よりも、将来の期待値で評価されます。さらに言えば、ツイッターやメタといった企業は、収益のほとんどを広告に依存していますから、景気が悪くなると真っ先に影響を受ける可能性が高い業種です。

実は株式市場におけるネット企業の株価は、年初の段階から大幅に下がっていました。株価というのは経済の先行指標と言われますが、投資家は今年の早い段階から、景気後退やネット企業の業績悪化を見込んでいたことになります。

一般的に景気が悪くなると、最初に先端的な企業や成長企業が影響を受け、その後、しばらく時間が経過してから身近な企業に影響が及んできます。

このタイミングでネット企業のリストラが進んでいるということは、来年前半になると景気後退がより鮮明になり、そこから一般企業のリストラが進んでいく可能性が高いと考えてよいでしょう。

米国は過去20年間、行き過ぎが指摘されるほどの好景気が続いていましたから、景気後退がもたらす影響は極めて大きいと考えられます。一方、日本はずっと不景気が続くという最悪の状況であり、幸か不幸か、日本はこれ以上、悪くなりようがないほど経済が停滞しています。このため来年、米国の景気が悪化しても、米国と比較すると影響は軽微なレベルで済むかもしれません。

しかし、米国の景気が悪くなれば、日本も悪化するのは経済の常識であり、特に輸出産業についてはアメリカが主戦場ですから、不景気の影響を大きく受ける可能性が高いと考えられます。米国がくしゃみをすると日本は風邪をひくという話もありますから、来年の景気動向には十分注意した方が良いでしょう。
 

 


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