コスパ服には印象的な小物を合わせて”強弱”をつけるのがスタイリスト室井さん流
室井:前回の松井さんが「旧(=長く信頼しているブランド)」に「新(=コスパブランドの旬)」を足すというお話と似た感覚で、“強と弱”でバランスを図るようにしているんです。私の場合はコスパブランドで選ぶものって、ベーシックアイテムばかり。Tシャツやニットなど、スタイリングの土台になってくれるものがほとんどなんですよね。特にコスパブランドのベーシックは、体型も年齢も性別も超えて”誰にでも似合う”ものであることもひとつの特徴ですよね。いい意味でわかりやすい”ブランドらしい”ポイントがないことが多いんです。とことんシンプルでジェネラル。なので、しっかりと自分らしさを加える味付けはするようにしています。
松井:そういう考え方ね。なるほど。ニットはあえてメンズのラインから選ぶという人もいるものね。手持ちのちょっと甘めなアイテムを引き立たせてくれるのは潔くシンプルなものだったりするし、ムロリンのベルトも、受け止めるアイテムが削ぎ落とされているからこそ、大袈裟にならず絶妙なアクセントになってくれるのかも。
室井:甘めなものって、この年齢になると好きだけでは取り入れづらくなることもあるんですよね。甘い×甘いだと痛くなっちゃう。そんなふうに感じたら、コスパのそぎ落とされたベーシックアイテムに合わせてみるのはおすすめですよ!
「ものを作るのは簡単なことではない」を
意識してコスパ服もハイブランドも大切にしたい
松井:私たち、大変! いくらでもお話しできる(笑)。何気なく選んでいるお洋服、深掘りするって、なかなかしないことだけれど、いろんな気づきをもらえるわね。
室井:同感です。スケールメリットのお話も、響きましたよね。ファッションやおしゃれって、感覚的で、ふんわりしている感じがするけれど、価格を抑えるための取り組みはまさにビジネスそのものでしたよね。
松井:コスパを叶える背景よね。ビッグビジネスゆえのスケールメリットという言葉に、洋服=おしゃれ=楽しい、だけではないビジネスとしての”現実”や”仕掛け”を実感しちゃった。
室井:そうそう、まさに経営。規模がさらに大きいグローバル企業ともなれば、社会にも経済にも直結する話にもなるのもわかりますね。
松井:ものを作るって簡単なことではないから、「安い」の裏側の事情、そこにも改めて意識が向きました。洋服に限らず、すべてそうなのだけれど、ね。
室井:楽しみだけでない、というのは確かにありますよね。
松井:例えば、ハイブランドなどのお値段が張るものって、クオリティやものづくりにかかっている費用や時間も違う。そのものが持つ文化背景も全然異なるじゃない? だから高いのには理由があるのだけれど、実際にお支払いするときに、飛び込む勇気というか、「この子と一緒に楽しく頑張るー!」って覚悟を決めているんだと思う。
室井:そうですね。買うときの勇気、それは間違いなくあります。
松井:だからこそ、その子が大切な存在になってくれるし、愛を持って接することができる気がするの。少なくとも丁寧に扱おうと思うわよね。コスパアイテムだって、ひとたび手に入れたものなら「買ってよかったー!」って愛すべきものにしたい。ワードローブに同じように並ぶことになるのだから。
室井:自分にとってリアルクローズにならないと、いくら安くてもコスパではないんですよね。そしてやっぱり、安くていいものが手に入るのはもちろんうれしい(笑)!
松井:コスパ服って、捉え方もさまざまよね。これが答えというのは、正直、人それぞれ。お手頃で手に入れられて、それがおしゃれを広げるきっかけなったら、きっと生活の彩りになると思う。でも同時に、安いからとりあえずいいかって使い捨てる感覚にはならないようにしたいなって思いました。便利の功罪じゃないけれど、ね。
室井:本当にその通り。良し悪しだけで話せることではありませんね。アイテムの変化のスピードも速いし、ちょくちょくチェックしながらいいものを見つけられたらやっぱり楽しい! これからも上手に取り入れていきたいと思います!
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取材・文/松井陽子
構成/幸山梨奈
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