自宅でできるロールプレイングを行う
ひとりでロールプレイングに取り組む際は、相手に伝えたいことをしっかりと書き出すところから始めましょう。書き出したあとは、相手が言いそうな切り返し言葉を想像していきます。これを言ったら相手はなんと言ってくるのか、日頃、付き合っている相手であれば、なんとなくわかるはずです。
「○○と言い返してくるだろう」
「ここは突っ込まれてしまうだろう……」
「こんなところに反応してきそうだ」
このように想定される反応を予測して、どう切り返すかを考えていきましょう。研修では、相手のリアクションへの対応まで想像し、そのうえで伝えたいことを書き出して整理していきます。でも、普段から考えを整理することに慣れていない人は「結局、何が言いたいのか」ということにたどり着くまで、かなりの時間がかかるでしょう。何回も繰り返していくうちに、長い時間をかけなくても整理できるようになっていくものなのです。
ただし、ここまで準備をしても、ロールプレイングで相手役の人を目の前にすると、まったく違うことを言ってしまう人もいます。ひとりで練習していても、言いたいことからずれてしまう場合は、書き出してまとめたものを何度も確認しながら、口に出すということを繰り返しましょう。
慣れるまではとても時間と労力がかかりますが、場数を踏み、言い慣れることで攻撃的な人を目の前にしたときにも、アサーティブな対応ができるようになる日がきます。トレーニングすればコミュニケーションのとり方は変えていけるものです。最初は考えを整理することに時間がかかったとしても、すぐに効果が出なかったとしても、あきらめずに、自分のペースで練習を続けてみてください。
著者プロフィール
戸田 久実(とだ くみ)さん:アドット・コミュニケーション株式会社代表取締役/一般社団法人日本アンガーマネジメント協会理事/アンガーマネジメントコンサルタント/一般社団法人アンコンシャスバイアス研究所認定トレーナー。立教大学卒業後、株式会社服部セイコー(現・セイコーホールディングス株式会社)勤務を経て研修講師に。銀行・生保・製薬・通信・総合商社など大手民間企業や官公庁で「伝わるコミュニケーション」をテーマに研修や講演を実施。1on1のコンサルにも対応し、対象は新入社員から管理職、役員まで幅広い。講師歴は29年。著書は『アンガーマネジメント』(日経文庫)『怒りの扱い方大全』(日本経済新聞出版)『アンガーマネジメント 怒らない伝え方』『アドラー流 たった1分で伝わる言い方』(以上かんき出版)など多数ある。
『アサーティブ・コミュニケーション』
著者:戸田久実 日経BP 日本経済新聞出版 990円(税込)
相手を尊重しながらも自分自身の意見を伝える「アサーティブ・コミュニケーション」。その考え方やシチュエーション別の実践法を、講師歴29年、コミュニケーション関連の著作も多数ある著者がわかりやすく説明。ビジネスの現場視点で書かれていますが、プライベートでも十分応用できる事例が満載です。
構成/さくま健太
Comment