2022年は、“当て馬キャラ”の定義が大きく変わった年でした。主役級の2人をくっつけて、去っていくだけではないというか。散っていく側の気持ちも繊細に描くのが、今後のラブトーリーにおけるひとつのフォーマットになっていくのかもしれません。

【※ネタバレあり】この記事には、ストーリーの核心に触れる記述があります。ドラマ未見の方はご注意ください。
 

『silent』ヒットの要因は、湊斗を“悪”に振り切らなかったから?

2022年豊作すぎた“当て馬キャラ”から紐解く、ヒットドラマに共通する「恋愛の新しい描き方」_img0
『silent』(フジテレビ系)は、TVerFODにて配信中。いずれも最新放送回は一定期間無料。

代表例を挙げるとすれば、大ヒットドラマ『silent』(フジテレビ系)の湊斗(鈴鹿央士)でしょうか。彼は、新しい描き方をされているなぁと感じた当て馬キャラです。ある意味、紬(川口春奈)と想(目黒蓮)を結びつける役割を担っているわけだから、もっと“悪”に吹っ切ってもよかったはず。ちょっとでも悪い顔をのぞかせていた方が、紬の気持ちが想に揺れ動くのもスムーズに描けたと思うんです。

 

でも、そうはしなかった。このドラマは、湊斗だけでなく、想に思いを寄せる奈々(夏帆)も含めて、“結ばれなかった方”の気持ちを丁寧に描いていました。2人をくっつけるために、ほかのキャラを消費しないのが、すごく新しいなぁと感じたんですよね。だって、実際の恋愛ってうまくいくことの方が少なかったりする。視聴者の共感を呼ぶのは、どちらかと言えば当て馬キャラなんです。恋愛ドラマでは、当て馬をどれだけ美しく、かつ丁寧に描くかが、ヒットの鍵を握っていると言っても過言ではありません。『silent』は、その描き方がとってもうまかった!