2022年もさまざまなドラマが登場しました。その中でも、僕の心に突き刺さった5作品をご紹介。日本のドラマのこれからが楽しみになる、とっておきの名作たち。すでにご覧になった方も、まだご覧になっていない方も、ぜひご堪能あれ。

5位:『拾われた男』

『拾われた男』ディズニープラスで見放題独占配信中 © 2022 Disney & NHK Enterprises, Inc.

家族ってうっとうしい。家族っていとおしい

俳優・松尾諭の実話をもとにしたヒューマンストーリー。俳優を目指し上京した松戸諭(仲野太賀)は、ある日、1枚の航空券を拾います。航空券の持ち主は、芸能事務所の社長・山村(薬師丸ひろ子)。山村に可能性を見出された松戸は芸能界入り。売れっ子女優・井川遥(井川遥・本人役)の運転手などを経験しながら少しずつチャンスを掴んでいきます。

 

前半では、“個性派俳優・松尾諭”のブレイクまでの前日譚を、若き日の松戸と彼を取り囲む仲間たちを通じて、時にほろ苦さも混じえながら温かく描いていきます。が、後半になると物語はよりパーソナルな方向へ。突然アメリカへと旅立ったまま絶縁状態だった兄・武志(草彅剛)が倒れたとの知らせが諭のもとへ入ります。そこから始まる家族の雪解けの物語こそが、この作品の真骨頂。

『拾われた男』ディズニープラスで見放題独占配信中 © 2022 Disney & NHK Enterprises, Inc.

家族って、正直面倒臭い。血がつながっているからといって気が合うとは限らないし、大人になればなるほど肉親の偏見まみれの言動に生理的な嫌悪感を抱くことも。家族だからって必ずずっと付き合っていかないといけないわけじゃない。いっそ血のつながりなんて捨ててしまってもいいのかもしれない。

それでも、共に過ごした年月の分だけ分かち合えるものがある。太巻き寿司。スペシウム光線。持ち主不明のアダルトビデオ。六甲おろしと阪神タイガース。積み重ねてきたいくつものモチーフが回収されていく終盤の展開には、家族の絆の濃さを思わずにはいられません。

子どもの頃、自分を置いてどんどん先へ進んでいく兄の背中を泣きながら呼び続けた記憶。そんな幼い思い出がリフレインするクライマックスはもう涙腺崩壊必至。誰しもの心の中にある原風景に、「お兄ちゃん待って!」の叫びが深く深く突き刺さります。

家族って、うっとうしい。家族って、いとおしい。家族を愛する人も、そうでない人にも観てほしい極上のホームドラマです。