4位:『石子と羽男-そんなコトで訴えます?-』

脚本の巧さに涙、涙...僕の心に突き刺さった傑作ドラマ5【エンタメベスト2022】_img0
『石子と羽男』は、Paraviにて独占配信中。©️TBS

その信頼は、恋よりも尊い

バディものの魅力。それは、1人では半人前だけど、2人になると一人前どころか百人力にもなること。このドラマの主人公である石子こと石田硝子(有村架純)と羽男こと羽根岡佳男(中村倫也)もそんなバディです。

 

有能でありながら弁護士資格を持たないパラリーガルの石子と、見たものを一瞬で記憶する特殊能力を持ちながら想定外の事態に弱い弁護士の羽男。時に反発しつつ、お互いの弱点を補うようにして、毎回持ち込まれる依頼に2人は立ち向かっていきます。

そんな2人の関係性こそが、このドラマの最大の魅力。有村架純と中村倫也の緩急自在・丁々発止のやりとりを見ているだけで、なんだか微笑ましい気持ちに。しかもこの2人、単に口喧嘩しているだけではありません。お互いが隠し持つ傷や弱さを誰よりも敏感にキャッチし合っている。そこに、この2人の関係の美しさを見るのです。

朝焼けの非常階段で自身のコンプレックスを打ち明ける羽男と、そんな羽男の告白を聞きながら傷口に絆創膏を貼ってあげる石子。トラウマを乗り越え一歩踏み出そうとする石子と、そんな石子を守るように傘を広げる羽男。どれもこれも胸に沁みる名場面ばかり。そこに恋愛感情が混ざり込んでいないところが、2人の関係の純度を高めています。

日本のドラマはどうしても男女バディとなると恋愛的な方向へ発展しがち。ですが、「男女の間に友情は成立するのか?」なんて質問はもはや平成の遺物です。恋じゃなくても男と女はつながり合える。恋愛よりも強く揺るぎない信頼という関係を、あくまで説教臭くならず、さりげなくポップに描いたことに爽やかな感動が芽吹きます。

各話で発生する事件も、私たちの半径5メートルの世界で起こる日常的なものばかり。それを、きちんと面白く、時代とリンクさせながら描いたエンタメ性も秀逸。

見やすいのに見応えがある。一級品のリーガルエンターテインメントです。