2位:『初恋の悪魔』
このドラマそのものが、まるで消えない初恋みたい
日本のドラマのトップランカー・坂元裕二が放つ恋と友情と殺人の物語。それが、『初恋の悪魔』です。
前半は、鹿浜鈴之介(林遣都)ら警察組織のはみ出し者たちが織りなす“考察型”ミステリー。ですが、回を重ねるごとに「マーヤーのヴェール」を剥ぎ取るように、少しずつ物語の全貌が見えはじめてきます。
そこで描かれたのは、大きく挙げると2つ。1つは、鈴之介を通して描かれた、集団社会から疎外され続けてきた人間の心の再生です。鈴之介はとても心の優しい人です。けれど、ちょっと人と違う趣味がある。人と付き合うのが少し苦手。それだけで「気持ち悪い」と疎まれ続けてきた。
そんな鈴之介が人と出会い、関わり、恋をし、そして自分らしく生きていく。その過程を、ユーモアを交えながら、決して上からではなく、どうしても社会からはみ出してしまう人たちと同じ目線に立って描いていく坂元裕二の温かな筆致と、細胞から感情が沸き起こるような林遣都の演技に、何度も何度も泣かされました。
特に、鈴之介が出会ったある老女との回想と、その告白からつながっていく馬淵悠日(仲野太賀)らとの友情劇は今年いちばんの号泣エピソード。初めて誰かに受け入れてもらった。初めて孤独が少しやわらいだ。4人で歌うYUIの『CHE.R.RY』がおかしくて、眩しくて、自分もそこにいたくなる。鈴之介の「大丈夫。自分らしくいればいつか未来の自分が褒めてくれる。僕を守ってくれてありがとうって」は、かさぶただらけの僕の心を救ってくれた名台詞でした。
そして、2つ目は、いなくなる人への哀惜と愛着。摘木星砂(松岡茉優)の中に眠る、もう1人の人格。そこから始まるいびつな三角関係。そして、好きな人がいなくなるということ。最終回を観終わったあとの、ぬくもりと痛みが半分こになったような寂しさは今も心に残り続けています。それは、まるで消えない初恋みたいに。
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