純文学に新たなスタイル生まれた瞬間
4位 『おいしいごはんが食べられますように』高瀬隼子

この小説がすごかった!2022年ベストブック5選【真夜中の読書会・バタやんおすすめ本】_img2
ほっこりしたタイトルと装丁に裏切られる『おいしいごはんが食べられますように』高瀬隼子 そのギャップも含めて“おい食べ系”っていう一つのジャンルを築いたと思う。

第167回芥川賞受賞作にしてただいま18万部突破(2022年12月現在)! と勢いが止まらない。私は、社内でプルーフ(本になる前の原稿を簡易に綴じた冊子のこと。書店員さんなど関係者に先行して読んでもらうために作成されます)を読ませてもらったとき、ブラック度合いやシュールさがめちゃ好みでいい小説だなあと思ったけれど、こんなにメジャーになるとは想像できていませんでした。女二人、男一人が出てくるお仕事小説であり、恋愛小説なのですが、なんというか、どういうジャンルの小説と形容し難い系統のお話だったからです。

しかし少し経ってみて、これは例えば音楽やファッションの業界で、似た系統が受け入れられることによって新しい名前がついて確立される現象(“裏原系”とか“赤文字系”とか“シティポップ”とか)と似たような兆候なんじゃないかと思えてきました。

いまはまだ確立されていないけれど、あとあと文学史(大げさ)を振り返ってみたときに「ああ、あのコロナ禍の数年に生まれた、日々の細々としたむかつく出来事やイラっとさせる人のことを知的にポップに昇華した文学作品たち」みたいな感じで評されることがあるんじゃないか……と勝手に思っています。(⇦あんた誰!?)