「正しいことがしたいなぁ、正しいことがしたいなぁ」
印象に残っているこのセリフは、第3話で眞栄田郷敦演じる拓郎のもの。ドラマ『エルピス—希望、あるいは災い—』が、12月26日に最終回を迎えます。「正しさ」について、それに対する行動に対して考えさせられるこの作品のおもしろさを、あらためて振り返りたいと思います。
テレビ局内では大して重要視されていない深夜バラエティー「フライデーボンボン」を担当するアナウンサー・恵那(長澤まさみ)と、新米ディレクターの拓郎(眞栄田郷敦)。2人は、ある事件を調べ、真実を知っていくうちに変化していきます。
その事件とは、少女連続殺人事件。10年も前に逮捕され、死刑囚となった男・松本は、本当の犯人ではないというのです。調べるとどんどん明らかになっていく、冤罪の証拠。何とか事実を明らかにし、松本の死刑を止めたい2人ですが、彼らが戦わなければいけない相手は思った以上に強大でした。会社の体面や、もっと大きな力によって、彼らの努力は何度も水の泡になりそうになります。
回を追うごとに入れ替わる、立場や心境がおもしろい
それぞれにとっての「正しさ」や、人の態度、信用できる人がどんどん入れ替わっていくのが、この作品のおもしろさの一つです。
主人公であるアナウンサー・恵那(長澤まさみ)は「正しさ」を追うことを一度は諦め、目を逸らしてきましたが、事件の調査に関わったことを機にもう飲み込むのは嫌だと言います。でもその時の仕事の状況や周りの人(関係を持った男含む)で結構態度や姿勢を変えがちで、少なくとも外から見ると、言うことが結構変わっているように見えてしまいます。ときどきだめな人だなぁと思うけど、すごく人間らしい人だともいえるし、視聴者として事件を追っていると「ええ~」と思うけど、自分の人生で同じような状況があったら、恵那のようにふるまってしまう人、意外と多い気もします。
新米ディレクターの拓郎(眞栄田郷敦)は、弁護士夫婦の裕福な家庭に生まれ、エスカレーター式の名門高校を出たお金持ちのボンボン。ことなかれ主義で生きていたところから、あることをきっかけに真実を追う亡者のようになります。顔つきも目つきも全然変わり「闇落ち」と言われるほど。本当に目が全然違って、眞栄田郷敦さんの演技が光ります。一度スタンスを変えてからはころころ変わったりはしないので、ある意味拓郎のほうが視聴者に心が近いというか、主人公っぽいかもしれません。
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