年末年始、みなさんはどんなふうに過ごされたでしょうか。自宅でのんびり。実家に帰って家族とワイワイ。これからやっとお休み、という方もいらっしゃるかもしれません。いずれにしても、帰れる「家」があることは何にも変え難いものだと、昨今の世界情勢に触れるたび感じる筆者です。同時に、家というのは、家族がいればそのぶんだけ色々な出来事や思いが集まるものですよね。それは、嬉しいことだけとも限りません。

モデルの亜希さんの著書『家 ごはんと野球』には、長い時間をかけて亜希さんが根ざしてきた「家」と、自身のさまざまな思い、そして家族の物語が綴られています。今回は本書から、その一部を抜粋してご紹介します。

(写真:『家 ごはんと野球』より/「Marisol」2016年10月号(集英社)、撮影:竹内裕二)

亜希(あき)さん
1969年、福井県生まれ。モデル、アパレルブランド「AK+1」のディレクションを務めながら、大学生と高校生の男児2人を育てている。食べ盛りの息子達に作り続ける豪快な家庭料理は、雑誌やテレビ、WEBメディアで話題に。明るく飾らない人柄が、幅広い層の女性に支持を得ている。YouTube「亜希の母ちゃん食堂」を配信中。2021年に設立したオンラインサロン「まどい寮」は今年「まどい家の人々」にリニューアル。著書に『お弁当が知ってる家族のおはなし』『MY STYLE』(集英社)、『亜希のことば』(講談社)がある。

 

つらいときこそ、いつもの毎日を繰り返す


亜希さんがInstagramに投稿した、8年間の写真と言葉をもとにまとめた『家 ごはんと野球』。本書の物語が始まるのは2014年。亜希さんが離婚を経験した年でもあります。まだ幼かった息子さんたちからの「マッサージサービス券」や、大人顔負けの立派な夕飯の「お品書き」。そうした、家族との愛情たっぷりのエピソードのはざまに、離婚当時のことが綴られていました。

離婚したいと言っているうちは、ひよっこだと思う。
本気で決めたときは、自分でも驚くほど事務的に事を運んだ。離婚ってそういうことなんだと、勉強になった。
踏み切れないでいる時期、一体何に悩んでいたんだろうと振り返ると、公になることで子供達にどう伝わるのか、ということ以外にはなかったと思う。
だから、引っ越し準備は彼らの目にふれないうちに済ませたし、出て行く時は忍者のように素早かった。笑

 
息子さんの少年野球、親子大会でバッターボックスに立つ亜希さん。結果は……「#空振り三振」のハッシュタグが。(写真:『家 ごはんと野球』より)

何気ない暮らしの中に、突如降ってくる深刻な問題。それでも今までと変わらず仕事を続け、子どもたちにボリュームたっぷりの「母さん弁当」を作る亜希さんの日常……。その対比に思わずハッとしましたが、いつだって誰にだって、招かざる問題が家の扉を叩く可能性はある。そして、その後も「生活」は続いていく。そんな当たり前なのに忘れがちなことを、亜希さんのお弁当たちが教えてくれる気がします。

(写真:『家 ごはんと野球』より)

小さな幸せを見つけること。家族みんなでしっかり食べること。自分がちゃんと笑っていること。どんな時でも、子どもたちにたくましい背中を見せてきた亜希さんは、「逮捕」と題されたコラムでこんな思いを語っています。

つらいときこそ、忙しくする。
日常を変えない。
毎日を繰り返す。


今の関係性が一番健全でうちっぽい


亜希さんと家族が食べたたくさんのお弁当、その写真には、自分自身への励ましや、思い出の言葉が添えられていて、つい一緒にしんみりしたり、私はどうだろうかと我が身を振り返ったり、きちんと日々を積み重ねるためのヒントがおかず以上に盛りだくさん。人は食べることを考えるときは、生きることを考えるのだと、改めて実感する筆者です。

CM撮影で共演したゴールデンレトリーバーとの1枚。「撮影中犬好きな次男に写メを送ると、犬だけの写真送ってと返事が来て凹む母…笑」(写真:『家 ごはんと野球』より)

「子育てのヒントを野球からたくさんもらった」という亜希さんですが、大学生と高校生の息子さんは現在、ふたりとも野球をしているのだそう。今では、家族の間で「あぱっち」の愛称で呼ばれている清原さんに、息子さんたちが野球を教わっているといいます。

「最近彼らの背中は、51歳の背中より逞しくも感じる時が増えてきました。負けじと母さんは奮闘します」とのメッセージと共に投稿された、成長した息子さんたちの後ろ姿。(写真:『家 ごはんと野球』より)

本書で綴られていた亜希さんの次の言葉が、とても印象的でした。

あれから(離婚から)6年経って、今の関係性が一番健全でうちっぽい気がする。
清原の個人事務所の代表までやっているのだから、自分でも笑ってしまう。
立場上、憶測で様々なことを言われるけど、私たち家族が分かっていればいいことで、それでいいと思ってる。


ごはんと野球でつながっている、亜希さんの「家」。我が家が幸せかどうかは他人になんて測れない、という至極当然のことを気づかされるだけでなく、何があってもモリモリ食べて乗り切ってやる! というエネルギーをもらえる本書は、家族の幸せと1年の無事を願う年始の読書にもぴったりの1冊です。

ちなみに、本書で行われた息子さんたちへのインタビューでは、「お母さんみたいな人と結婚したい?」という質問が。その答えには、亜希さんでなくても目頭が熱くなること必至です……! 
 

亜希さんの思いが詰まった、たくさんの「母さん弁当」
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『家 ごはんと野球』
著者:亜希 CCCメディアハウス 1815円(税込)

モデルとして活躍し、アパレルブランド「AK+1」のファッションディレクターも務める亜希さんが、Instagramで綴った8年間の記録を写真と共にまとめた1冊。離婚を経験し、ふたりの子どもたちと過ごす中、著者が大切にしたこと、手放したこと、諦めなかったこととは――? 飾り気のない、等身大の言葉で綴る「義母」「離婚」「逮捕」などの書き下ろしコラムも掲載。



構成/金澤英恵