3月8日の「国際女性デー」に合わせて観たいエンタメ作品を、あらゆるジャンルに精通するプロの視点でセレクト! 今回、映画ライターの渥美志保さんが紹介するのは2019年公開の長編アニメーション『ディリリとパリの時間旅行』です。小さな女の子の冒険ストーリーを、国際女性デーにおすすめする理由とは?

3月8日「国際女性デー」とは?
国や民族、言語、文化、政治といった
あらゆる違いを超えて、これまで女性たちが達成してきた成果を讃える日です。

発端は1908年、米・ニューヨークの女性労働者が起こした待遇の改善を求めるストライキ。これを機に、女性の権利や政治的・経済的な社会参加を求める動きがヨーロッパ全域へと広がっていきます。決定打となったのは1917年、第一次大戦下のロシアで起こった「二月革命」です。女性たちの“パンと平和”を求める抗議は、男性たちや兵士らをも巻き込んだ民主革命へと発展します。結果、ロシア皇帝による帝政は崩壊。暫定政府は女性の選挙権を認めました。

この二月革命が起きたのが3月8日(当時のロシアではユリウス暦2月23日)でした。国際婦人年である1975年に、国連はこの日を「国際女性デー」とすることを発唱。77年に制定されました。

『ディリリとパリの時間旅行』

『ディリリとパリの時間旅行』 ブルーレイ、DVD発売中 発売元:ウォルト・ディズニー・ジャパン 価格:5170円(税込み) ©2018 NORD-OUEST FILMS – STUDIO O – ARTE FRANCE CINEMA – MARS FILMS – WILD BUNCH – MAC GUFF LIGNE – ARTEMIS PRODUCTIONS – SENATOR FILM PRODUKTION

国際女性デーにミモレの読者に見てほしい作品は? と聞かれて、私が真っ先に思い付いたのがこの作品です。正確に言えば「ミモレの読者に」じゃなくて「ミモレの読者に、お子さんと一緒に」見てもらいたいと思った作品です。

主人公のディリリはニューカレドニアからやってきた頭のいいおしゃまな女の子で、伯爵夫人の養女です。物語は彼女が、友人の青年オレルとともに繰り広げる冒険を描いてゆきます。

 

映画の舞台は1900年のパリ。完成したばかりのエッフェル塔の周辺には飛行船が飛び交い、ピカソ、モネ、フリーダ・カーロといった時代の芸術家が集い、伝説の女優サラ・ベルナールや作家兼女優のコレットが活躍し、パスツール研究所やキュリー夫人の活躍で科学も進化し、「ムーラン・ルージュ」のショーは毎晩のように大盛況……と、パリが最も華やかだった「ベル・エポック」と呼ばれる時代。これをフランスアニメの巨匠ミシェル・オスロ監督がめちゃめちゃ美しく、めちゃめちゃオシャレに映像化しています。

「宮崎アニメ」に慣れた日本人は、ちょっとやそっとじゃ感動しませんが、この作品の奥行き感と背景の精緻さ、鮮やかな色彩と暗さのコントラスト、アール・ヌーボーのデザインやファッション、時代を代表するアート、キラキラしたおとぎ話のような場面、ロマンチックな風景が次々とあらわれ、まさに動く絵本という美しさ。それだけでおつりがくるくらい楽しめます。