イラスト/辛酸なめ子

「アラフィフの壁」を無理なく、軽やかに越え続ける漫画家・コラムニストの辛酸なめ子さんが、自らのアンテナに引っかかった事象を紐解く連載。前回に引き続き、3年ぶり開催の新年一般参賀の様子をレポート、いよいよ待望のお出ましです……! 今回、写真も全てなめ子さんが激写しました。

前回記事
辛酸なめ子、3年ぶり新年一般参賀は「コロナ前より待機時間が短縮され少しラクでした」【レポ前編】>>

 

ニューノーマルの抽選制の一般参賀は、例年にない寒さ……!


3年ぶりの一般参賀は寿ぎのヴァイブレーションに満ちていました。空は青く、空気は澄んでいて、エンペラーウェザー(天皇晴れ)を感じさせます。警察によって列は完璧に管理され、砂利の上で静かに待機する人々。今回は抽選だからか、飛び込み参加の外国人観光客がほとんどいないのが少し淋しいです。後日発表された参加者は約7310人で、1回あたり約1200人、これまでの約10分の1なので、スペースにもゆとりがあります。

しばらくして、遠くの方に人々の流れが見えました。第5回の、午後2時20分頃のお出ましに参列した方々が、退出しているようです。そして、いよいよ第6回参加者の列にも動きが。コロナ前だと、例えば前の回で後ろすぎて皇族ご一家の姿が見えなかった人は、引き続き次の回まで残って良いポジションで待機することが可能でした。でも、ニューノーマルの抽選制の一般参賀は完全入れ替えスタイルのようです。

長和殿の前の宮殿東庭に到着し、どこから見ようと場所を探そうとしたのですが、ふと足元を見て驚きました。なんと、立ち位置が地面に張られたガムテープでバミってあったのです。「アー10」「イー20」みたいな、アからフまでの頭文字と数字が石畳に貼られたテープに書き込まれていました。この場限りのマイナンバー制度です。貼った人の労苦がしのばれます。当選番号が「イー11」だったのでその位置を探すと、なんと前から2番目でした。しかもアの人が来ていなくて,実質最前列です。一般参賀に参列して20年くらい経ちますが、こんな良いポジションははじめて。

足元を見たら当選番号のバミりが……。準備された方、お疲れさまです。

それぞれの石畳は、適度に間隔があいてソーシャルディスタンスが保たれるようになっています。一見快適な空間ですが、長和殿前で立って待機していて気付いたこと。それは、例年にない寒さです。午後なので日も陰ってきたというのもありますが、これまで一般参賀では人々がおしくらまんじゅう状態でギュウギュウになって待っているのが常でした。今回、石畳1個おきとかになっていますが、コロナ前は横長の1つの石畳に3人くらい入っていた気がします。窮屈でしたが、おかげで暖かかったです。ソーシャルディスタンスだと人肌で暖がとれず、人と人との間を風が吹き抜けるので寒いです。人間はわがままなもので、管理されて快適な空間にも不満が芽生えてきました

ちなみに2020年のコロナ禍直前の一般参賀はこのくらいの密状態でした。

寒さをまぎらわすため、建物の前に立っている皇宮護衛官に注目。ピシッとした姿勢で屹立していて,約10分に1回交代するのですが、その度に決まったフォーメーションで規律正しく動き、敬礼したりしていてかっこいいです。肌のハリ具合を見ると20代でしょうか。初々しくも、同僚と向かい合って思わず笑ってしまった皇宮護衛官もいます。こんな真ん前で見ていたら「推し皇宮護衛官」もできてしまいそうです。

皇宮護衛官の貴重な交代シーン。これまで後ろからは見えない場面でした。

一番前の特等スペースには、テレビでよく見かける宮内庁担当のレポーターや記者の方々が、フォーマル感漂う紺や黒のファッションで待機。いよいよ午後3時10分頃のお出ましの時間が近付いてきました。

皇室ご担当の方々ご一行はいつも一番いい場所にスタンバイ。スチールカメラマンは会場後ろです。
 
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