あぁ! もう、世の中の恋愛至上主義に疲れたーーーー!!
と思っていた筆者に、沁みるドラマが始まりました。蓮佛美沙子さんとトリンドル玲奈さんのダブル主演の、テレビ東京系ドラマ『今夜すきやきだよ』です。

©︎谷口菜津子・新潮社/「今夜すきやきだよ」製作委員会

『今夜すきやきだよ』は、蓮佛美沙子さん演じる内装デザイナー・太田あいこと、トリンドル玲奈さん演じる絵本作家・浅野ともこの2人が、世間から押し付けられるあらゆる「当たり前」と格闘しながらも、自分に正直に生きていく物語。

演技派のお2人のお芝居がめちゃくちゃいい……のはもちろん、ともこの友人でフリーライターの村山しんた役を務める三河悠冴さん、あいこの上司・五十嵐博美役を務める河井青葉さんなど、脇を固める役者さんたちの演技もすごくいいんです。

そして、出てくる人物が「当たり前」という「押し付け」にぶつかった時に、違和感を感じる価値観との向き合い方や、心境の変化がとっても丁寧に描写されていて、胸に迫るんですよね。

 


女性への「当たり前」の押し付け、エイジズムに違和感を持って


例えば、1話では、あいこが「女性は家事をして当たり前」「仕事より家庭を優先して当たり前」という価値観にぶつかります。あいこは婚約者に家事ができないことを責められ、それに対して、「家事はプロのサービスに任せたい」と口にすると、パートナーからは「じゃあ、俺は奥さんのご飯一生食べられないってこと?」と返され、さらには婚約破棄までされてしまいます。

また、4話ではあいことともこが「若いほうがいい、若さには価値がある」というエイジズムにぶつかります。「若さ」ばかりが是とされる風潮についてともこが考えていた時、憧れの絵本作家の大先輩、内山田美津子(宮崎美子)に出会い、彼女が歳をとる中で、「若い層に届く作品を描けるのか?」という不安を抱いていることを知ります。

それから、ともこはずっと昔から読んでいた内山田の作品を見て、思わず笑ったり泣いたりして、改めて内山田の作品の偉大さを認識し、心境の変化が訪れます。その後のともこのセリフがとても印象的。

「この世に永遠などない。だけどそれは何かを失う儚さなんかじゃなくて、積み重ねていく確かさだと思う」

©︎谷口菜津子・新潮社/「今夜すきやきだよ」製作委員会

歳を重ねることは、若さを失うというマイナスなことではなくて、着実に何かを積み上げていくということなのかも――そう気づいたともこ。そんなふうに考えられたら、少し気が軽くなりますよね。