お祭り騒ぎが好きだ。正確にいえば、お祭りが終わった時のさびしさや後悔、そこに入り混じったほんの少しの安堵まで含めてのお祭り騒ぎに惹かれる。

【ブラッド・ピット主演映画『バビロン』評】「これぞお祭り騒ぎだ」すべて手放しても味わう価値がある特別な興奮_img0
(C) 2023 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

デイミアン・チャゼルの最新作『バビロン』には、そんなお祭り騒ぎの醍醐味がこれでもかと詰め込まれている。舞台は1920年代のハリウッド。無声映画の時代である。物語は映画制作を夢見るメキシコ人の青年マニー(ディエゴ・カルバ)が丘の上まで象を運ぶ場面から始まる。丘の上には映画プロデューサーの豪邸があり、象はそこで行われるパーティーのいわば余興で使われるのだ。

 

そのパーティーの場面がすごい。すばらしい。これぞお祭り騒ぎだ。

着飾るなんて生易しいものではない自己主張を体現したファッションに身を包んだ人々やほとんど裸の人々であふれかえっている。酒を運ぶウエイトレスでさえ自分の豊かな谷間を見せつける。2階にはドラッグ部屋があり、コカインやらアヘンやらさまざまな種類が揃う。あちこちで乱行が行われ、小部屋では変態プレイに興ずる者もいる。皆の嬌声はビッグバンドの演奏にかき消されていく。常識とか人権とか尊厳とか、そんなものはここにはない。今でいうハラスメントなどという概念とは切り離された世界だ。あるのは欲望、野心、退廃だけ。そしてハリウッドの黎明期の輝き。

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パーティーでは無声映画の大スターであるジャック・コンラッド(ブラッド・ピット)、スターになることを夢見る粗野なニュージャージーの田舎娘ネリー・ラロイ(マーゴット・ロビー)、象を運んだ後パーティーではスタッフとしてこき使われているマニーが出会う。延々と続くパーティーの場面は、しかし息をつく暇もないほどスピーディーで、この一夜でいろいろな物事が動く。

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