『銀河鉄道999』『宇宙戦艦ヤマト』『キャプテン・ハーロック』……。mi-mollet世代にとっては馴染み深い多くの作品を世に送り出してきた漫画家の松本零士さんが、先月亡くなりました。宇宙を舞台にした作品が多かった一方で、一貫して描いていたのはそこに登場している人たちの“心”。松本零士さんが見る者に伝えたかったことは何だったのか。その答えを探るべく映画『銀河鉄道999』をあらためて視聴。意外にもそこで気づかされたのは、当時とは決定的に違う生き辛さでした……。
少年・鉄郎の成長を描いた青春ストーリー
アニメ映画『銀河鉄道999』といえば、何度となくテレビのロードショーで放送されてきた作品。多くの人が一度は目にしたことがあることと思いますが、詳しい内容となると、正直記憶が曖昧な人がほとんどではないでしょうか。そこでまずは、簡単にストーリーの説明をさせていただきたいと思います。
時は、人間が機械になって永遠の命を手に入れられる時代。それにより傲慢になった機械化人たちは、生身の人間に対して横暴の限りを尽くしていました。主人公の星野鉄郎は、機械伯爵の人間狩りにより母親を殺された過去を持つ少年。いつか惑星アンドロメダへ行って自身も機械化人となり、機械伯爵に復讐することを誓っていました。
ある日鉄郎は、メーテルという美しい女性と出会い、彼女に「アンドロメダへの旅に付き添ってほしい」と頼まれます。こうして地球を旅立つこととなった鉄郎。列車は途中、様々な星に停車し、鉄郎はそこでの様々な経験を経て、自分が本当にすべきことは何か答えを見つけていく……というものです。
YouTube「東映アニメーションミュージアムチャンネル」では、映画「劇場版 銀河鉄道999」が「ありがとう 松本零士先生『劇場版 銀河鉄道999』期間限定公開」として3月6日より3月13日までの期間限定で配信中です。
宇宙という舞台や機械化人との戦いなどSF要素が多いため、子供の頃に見たときはよく分かっていなかったのですが、あらためて見るとこの作品は、終始鉄郎の成長を描いたド直球の青春映画であることを知りました。
住み慣れた土地も友達も何もかも捨てての旅立ち、多くの危険を乗り越えての成長、初めて抱くほのかな恋心、そして別れ……。『999』はこんなストレートな青春の一小節一小節を、臆面もなく真正面から描いています。とくに序盤、鉄郎が999に乗って出発するシーンは圧巻です。一度旅立てば、もう二度と地球には戻れないかもしれない。それでも若い鉄郎には、前に進むことしか考えられない。そんな彼のほとばしるような思いを乗せて列車は銀河へと羽ばたいていくのですが、これがゴダイゴの歌う『旅立ち』の何とも高揚感溢れるメロディと相まって、気恥しいほど胸に突き刺さってくるのです。ああ、未完成で危なっかしい若者が恐れ知らずに未来へ進んでいく姿って奇跡だな、と……。
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