3月8日「国際女性デー」に合わせて観たいエンタメ作品を、あらゆるジャンルに精通するプロの視点でセレクト! 『第三夫人と髪飾り』は、一夫多妻というテーマや官能的な表現から本国ベトナムでは公開四日で上映中止に。しかし世界中の映画祭では激賞され、数々の賞に輝いたという衝撃作。その凄さを、ライター渥美志保さんが解説します!
国や民族、言語、文化、政治といったあらゆる違いを超えて、これまで女性たちが達成してきた成果を讃える日です。
発端は1908年、米・ニューヨークの女性労働者が起こした待遇の改善を求めるストライキ。これを機に、女性の権利や政治的・経済的な社会参加を求める動きがヨーロッパ全域へと広がっていきます。決定打となったのは1917年、第一次大戦下のロシアで起こった「二月革命」です。女性たちの“パンと平和”を求める抗議は、男性たちや兵士らをも巻き込んだ民主革命へと発展します。結果、ロシア皇帝による帝政は崩壊。暫定政府は女性の選挙権を認めました。
この二月革命が起きたのが3月8日(当時のロシアではユリウス暦2月23日)でした。国際婦人年である1975年に、国連はこの日を「国際女性デー」とすることを発唱。77年に制定されました。
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『第三夫人と髪飾り』
主人公のメイはまだ幼ささえ残る14歳の少女。彼女が父親ほども年齢の離れた大地主の男のもとに「第三夫人」として嫁いでくるところから、物語は始まります。家を仕切るのは威厳あふれる 「第一夫人」。彼女は唯一の跡取り息子を生んだ人で、メイからみたらちょっと厳しいお母さんみたいな存在。もう少し年齢の若い「第二夫人」は周囲の誰もが魅了される美しさ。年齢の近いメイにとっては、憧れのお姉さんのような存在です。
映画はこの婚家ーーつまり19世紀後半のベトナムの日常を、美しい映像で描いてゆきます。舞台は山間にある「絹の里」で、婚家は養蚕を生業にする名家です。女性たちがまとうつややかなアオザイ、クラシック・シノワとでも呼びたいインテリアに、夜は赤いランタンが浮かび上がります。 日差しにきらめく川で行水する下着姿の女性たち、くしけずる長い髪、夜明けの竹林の逢引、さやさや揺れるシフォンの向こうで交わされる夜の営みなど、官能的かつ耽美的な美しさに満ちています。
小さな田舎の村から嫁いできたメイと同じ目線で、この「絹の里」を体験していきます。つまり当初は、初めて見る美しい光景に「わあ、なんてステキ」と魅了されていくのですが、そのうちに「え?」「どうして?」というようなことも感じ始めるんですね。
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