重さと明るさをバランスよく楽しめるストーリー

 

堀切園監督に直接聞いた制作秘話はもう少しあります。那美が姿を現すと、その国で死者が出ることから「死を呼ぶ女」と噂され、任侠一家の女親分の雰囲気さえも漂わせるキャラクターはある意味エンターテインメント感満載です。

死と向き合う重いテーマとは真逆の設定のように思えますが、「実在する方をモデルにしているんです」と、堀切園監督が明かします。実際にお会いした国際霊柩送還士の方々から明るさや人間的な魅力を感じたそうで、米倉さんの那美をはじめ、遠藤憲一さん演じる大親分的存在の柏木史郎役などのキャラクターが生まれたのでした。

ドラマの舞台「エンジェルハース社」のメンバーは一癖も二癖もありますが、単に面白がらせようと作られたものではないのです。ドラマのなかでその多様な個性は、文化や風習によって様々なかたちがある葬儀を受け入れていくのに役立っているように思えます。

 

那美とは真逆で、ドライで合理的な今どき女子の新入社員、高木凜子役はドラマの中で光る存在の1人です。松本穂香さんが好演しています。那美と凜子とのやり取りにクスっと笑えるシーンも多く、世代の違う女子同士の対立と学び合いまで楽しめます。凜子の視点で見ていくことで、国際霊柩送還士という仕事をわかりやすくさせています。

国も文化も越えて「ご遺体をご遺族のもとに送り届ける」ストーリーの重さと明るさのちょうどいいバランスを楽しめるドラマなのです。6話だけじゃ物足りない。そんな気にもさせます。

<作品情報>
『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』

 

配信日:Prime Videoにて3月17日(金)より独占配信
キャスト:米倉涼子 松本穂香
城田優 矢本悠馬 野呂佳代 織山尚大(少年忍者/ジャニーズJr.) 鎌田英怜奈
徳井優  草刈民代 向井理 遠藤憲一 ほか
原作:佐々涼子「エンジェルフライト 国際霊柩送還士」(集英社文庫刊)
脚本:古沢良太 香坂隆史
音楽:遠藤浩二
監督:堀切園健太郎
制作:NHKエンタープライズ
作品ページ:https://www.amazon.co.jp/dp/B0B66GL9PH
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構成/山崎 恵
 

 


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