安野モヨコ先生の「美人画報」シリーズをご存知ですか？ 美容雑誌『VOCE』にて1998年の創刊当初から2003年までの約5年間連載され129万部の大ヒットを記録した漫画エッセイ。あまりの人気ぶりに、安野先生の描くイラストがVOCEの表紙を飾ったことも（VOCE25年の歴史の中でも異例中の異例でした）。そんな伝説的作品がこの春、合本ベスト版として電子書籍となって復活！ その魅力を紹介します。
アラフォー、アラフィフをこぞって エモい気持ちに誘うビューティエッセイ
読者のみなさま、こんにちは。美容ライターの中川知春と申します。今年ジャスト50歳となる私は、アラサーだった連載当時も毎号「美人画報」を心待ちにし、さらに書籍も「美人画報」、「美人画報ハイパー」、「美人画報ワンダー」３冊ともコンプリート。約20年経った今でも、折に触れ何度も読み返しているガチファンです。
そんな私なので、あの名作が電子書籍となって蘇ると聞きもう大興奮！ しかも連載の神回が抜粋されているだけでなく、なんと書き下ろしまで収録されているなんて、ううう……感無量です。
美容にまつわるエッセイを山ほど読んできた私ですが、ここまで夢中になれる作品には出会ったことがありません。安野ワールド全開なオシャレなイラストを楽しみつつ、さまざまな美容への鋭い考察にハッとさせられ、しかもメチャクチャ面白い＆共感できる失敗談やダメエピソードもてんこ盛り。
何が素晴らしいって、今読んでも全然古くないのです。さらに、登場する美容情報がこれまた、美容好きのアラフィフ（アラフォーの方でも同じだと思います！）に刺さりまくります。
例えばコスメ。当時、オシャレさんに憧れる女の子たちがこぞってつけてた香水、アントニアズフラワーズ（私もレイジースーザンで買いました）、今はなき資生堂 ピエヌのピュアウォータリーカラーズのチーク（メイク魂に火をつけろというキャッチコピーも秀逸でしたね）、そうそう、フィトメールの入浴剤、オリゴメール ピュア（お金がないのにバケツで買った思い出……バカでした）などを読むたび、「なんて懐かしい！ あの頃の私は……」なんて20代後半の思い出たちが後から後から溢れ出てきて、当時を思い出させ、エモい気持ちにしてくれます。
超個人的な話で恐縮なのですが、サブカルライターの師匠に師事していた私が美容に目覚め、美容ライターの道を進んだのもこの連載の影響が大きかった。それくらい、影響力のある連載だったのです。
ちなみにVOCEは美容雑誌ですが、連載ではファッションアイテムもたくさん紹介されていて、当時のトレンドがてんこ盛り。セルジオロッシやマノロブラニクの華奢なヒール、DKNYの黒ニット、フェンディのミニバッグ……。懐かしすぎる！ それらがすべて、安野先生のあのオシャレな画風で描かれていて、もうたまりません。
自分を投影して安心できる
作者の“ダメ人間”ぶりが愛おしい
担当編集の方が取材でおっしゃっていて印象的だったのが、「安野先生はずっとダイエットしてましたよね〜」という言葉（しかし当時の安野先生のお写真を拝見すると、めちゃくちゃ細いしおキレイ。ダイエットいらないじゃん！）。
実際、作品内では大高酵素の酵素ドリンク、カロリー計算、黒酢、酢大豆、アロエジュース……etc. 連載当時、ダイエットに安野先生がさまざまなダイエット法に次々とトライしていましたが、それらはすべて3日ボーズに終わっておられました。さらにはダイエットをしつつも、豚骨ラーメンやヒレカツといったデブ飯がやめられないというエピソードに、当時はもちろん、更年期真っ只中でさらに痩せにくくなり、年々“食べる”が我慢できなくなった今、よりいっそうのシンパシーを感じます。
そうだよね、ダメ人間は私だけじゃないんだよね！ 別に痩せなくてもハッピーならいいじゃない！ と強い気持ちになれるところが魅力です。そんなふうにして今も昔も気持ちに寄り添ってもらいつつ、一方では安野先生が描くオシャレで美しい女性に憧れて美容のモチベーションを上げてもらえる。そんなメリットがこの作品にはあると思います。
さらに今回の電子化に寄せて新たに安野先生が書き下ろしたエピソードには、連載終了から20年歳を重ねたからこそのトピックスが満載！ 「昔はオシャレで着ていたくすんだ色の服を今着ると、レ・ミゼラブルの群衆みたいになる」的な、同年代だからこそ、激しく共感できる内容はミモレ世代に刺さること間違いナシ。電子化されたこの機会に「美人画報」を一読されることを強く強くおすすめします。
美しき小旅行スタイルとは？ をつづったエピソードを1話、下の画像で試し読みしていただけます。
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構成・文／中川知春
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