3月上旬、とあるニュースが飛び込んできました。
自民党の「教育・人材力強化調査会」が、“出産を条件に奨学金の返済額を減免する”という内容を提言の中に盛り込むことを発表しました。このニュースは、なぜ教育と出産を結びつけるのかといった疑問が噴出し、大きな波紋を呼びました。

そしてさらに3月13日に続報が。衛藤晟一元少子化対策担当相が子ども政策に関する党会合で、「地方に帰って結婚したら減免、子どもを産んだらさらに減免する」と述べたのです。

ちょ! なんか増えてるって! 地獄みたいなオプションついてるんですけど! 国から「地方に帰って結婚・出産したら奨学金減免します」と言われる日がくるとは。ディ、ディストピア……。

やっぱりまず感想としては、なぜ「教育」という問題と、結婚・出産を結びつけたのかというところに大きな疑問があります。
 

子どもを「奨学金減免」と引き換えにするグロテスクさ

 

この政策を打ち出したということは、奨学金の負担がライフステージの選択に影響を与えるくらい深刻な問題だと認識しているということなんですよね。だとしたら、それくらい重大な奨学金の減免の条件に結婚・出産を持ってくるとは、なんとグロテスク。

 

さらに、授業料は年々高騰し、いまや国公立大学でも多額の費用がかかります。しかし奨学金は多くが貸与型かつ利子付き(無利子のものもありますが、借りられる上限金額は低く条件も厳しいです)。そもそも“奨学金”に利子が付くって意味わからないんですけどね。

教育への公的支出がOECD加盟国の中で最低レベルという日本で、これから奨学金を借りて進学する学生たちにとって、減免の条件が地方での結婚・出産って、それで本当にいいのか? と思います。

この政策は検討段階(4月5日現在)ではありますが、減免の対象が子どもを産んだ男女の場合、女性の立場としては少し引っ掛かります。もちろん、生まれてくる子どもの養育という点では、本来男女の違いはありませんが、妊娠・出産に限れば、命がけであらゆる負担やリスクを負うのは女性です。妊娠・出産は男女で最も不均衡なものの一つです。しかし、かといって対象が女性のみだとしても、今度は男性からしたら不公平感を感じるでしょう。

また、対象が女性のみでも、男女ともにでも、どちらにせよ様々な理由で出産ができない人は不公平さを感じるでしょう。

それを考えるとやはり、子どもが生まれた世帯の子育てにかかる負担の軽減という形でお金が支給されるほうが、全方位が納得できるのではないでしょうか。

政府の政策を聞いていると、子どもは意志があれば生まれる(しかも自動的に、機械的に!)とでも思っているのかなと感じることがあります。