インボイス制度を導入すると消費税の滞納が続出する可能性があるって、どういうこと?


佐々木:2021年に、総務省はわざわざレシートへの消費税の明記を義務化しています。「消費者が払っている」という印象と「痛税感」を植え付けたいんだと思います。

アツミ:この「チョロまかし疑惑=益税問題」が、インボイス導入のための大義名分のように言われてきましたけど、実は思い込まされていただけだったんですね。

小泉:2月の国会で財務省は「消費税は預り金ではない」とようやく認めたんですが、でもそもそも消費税導入の翌年となる1990年に、「益税はない」という地裁の判決もでてるんですよね。

アツミ:前回の最後では、佐々木さんは「滞納者が多い消費税のシステム自体が破綻している」「導入以降は滞納者が続出する」っておっしゃっていたじゃないですか。滞納するとどうなっちゃうんですか。やっぱり差し押さえとか?

佐々木:そうです。あとは分割とか。うちのお客さんでネイルサロンを経営されている方で、令和2年にコロナ禍にも関わらずすごく頑張って売り上げが1000万円を超え、課税事業者になった方がいるんですね。実は消費税は2年前の売り上げを基準に今年の申告の要否を判断するので、仮に令和4年の売り上げが1000万円以下でも消費税を納める必要があります。計算した結果この3月の申告では40万円くらいの消費税の納税となりました。今年消費税の申告と納税がでること自体は分かっていたので、1年くらい前から「結構税金が出るので、毎月貯金はしておいてください」と伝えていて本人もそれは承知していらしたんですが、実際、商売を回していると貯金ってなかなかできないんですよ。結局は「分割で払えませんか」ってことになったんですが。

小泉:消費税を払うために貯金しなくちゃいけないなんて……。

写真:Shutterstock

佐々木:そのくらいの売り上げがある人でもかなりの負担なのに、年収で300万円くらいの方で3万円くらいの納税だと普通に滞納が出ると思います。

 

アツミ:そういう中で廃業が増えると、生活保護など社会保障のお世話になる人も増えていくんじゃないかと思うんです。新自由主義的な弱肉強食思考の人たちってすぐに「使えない人間が淘汰されていくのは当たり前」みたいなこと言うけれど、そういう人たちは業界から消えても社会からきえることはないわけで……。

佐々木:そこまで考えていないでしょうね。


アツミ:あの、今の話にちょっとつながると思うんですが、私が勉強してきたことを話してもいいでしょうか。消費税って「売上-原価(課税経費)=粗利」に対して10%かかりますよね。でも粗利はそこから、例えば人件費(非課税経費)を引いたらものすごく少なく、時にはマイナスになっちゃうこともあるじゃないですか。でも消費税は「粗利」の10%ってことは、利益が全然出なくても払わなきゃいけないと。これホントですか?

佐々木:ホントです。

アツミ:わああ。なんだか私が子供のころによくあった時代劇みたいです。日照りが続いてコメがぜんぜん収穫できていない百姓に、それでも年貢を納めることを強いる悪代官みたいな……辛すぎます(泣)。

佐々木:だから滞納者が多いんです。そもそも赤字でも納税しなければならない税金っておかしいんですよね。

小泉:それは同時に「消費者からの預かり金」でないことの証拠でもありますよね。例えば温泉の「入湯税」は、いわゆる「預かり金」ですが、これは右から左に流すだけいいから事業者にとっての痛税感なんてないわけです。
でも消費税は仕組みとしてそうなっていないから、預かったものをそのまま納める税金ではないから滞納が起きてくるわけです。赤字でも請求されるものを「益税」だなんて、お門違いだと思います。


常松:インボイスの導入で、消費税という制度の破綻がより明確に見えてきている気がしますね。

アツミ:会社が人件費を「課税経費」にするために、本来は正社員を採用するところを、派遣とか業務委託に切り替える可能性もありませんか? 業務委託の場合は個人事業主なので社会保険は全額自己負担になりますし、インボイス制度の導入でさらに貧困へと追いやられてしまうし。インボイス制度の導入で、さらにこの流れが加速することとかないんでしょうか。