めぐりめぐって、雇用形態にまで影響を与える可能性も!?


小泉:消費税の仕組みの上で経営状態を良くしよう、節税しようと思ったら、正社員を減らす経営判断が出てくるのも当然です。派遣や業務委託が増え、給料が上がらず、結婚や出産、子育てができず……というのが、この30年の日本で起きたことで、 その要因に消費税があるんじゃないかと言う人もいます。

アツミ:現代って「平等」や「公正」が特に叫ばれる時代ですが、そもそも消費税は「平等にかかる税金」のように見えて、実は低所得者が一番痛税感を味わう逆進性の税金ですよね。例えば商品価格に加味された1万円の消費税は、月に100万稼ぐ人には月収の1%だけど、月10万円で暮らす人には月収の10%なわけで。

「インボイス制度」で浮き彫りになる消費税の問題。信じ込まされている”益税問題”と、滞納続発の”赤字でも払わされるシステム”_img0
写真:Shutterstock

佐々木:導入当時の竹下登首相は、消費税に関して国民の間に生まれている以下の「6つの懸念」を表明しています。
①逆進性、②不公平感、③中堅所得者に対する過重、④痛税感がなく引き上げが容易、⑤事務負担の増大、⑥インフレ
インボイス制度の導入で、この全てがほぼ達成しちゃうんですよ。最後のドラゴンボールが集まる! みたいな感じで。

 

常松:あの、私は個人情報の公開のことも気になるんですが。制度に登録した事業者がネットで公表されていて、一時は個人情報すべてが見えている状況でしたよね。あれは改善されたんでしょうか?

小泉:やや改善がありましたが、それでもちょっとシステムに詳しい人がいじると、隠された情報もすべて見えてしまうことが指摘されています

アツミ:サイトのトップに「当サイトの検索機能に対して、スクレイピングなど、プログラムを用いて公開している情報を取得する行為の禁止等を利用規約に追記しました」というお知らせが付け加えられたのを見て、なんだか脱力してしまいました。「禁止します!」と表示するだけで防げると思っているのかと……

小泉:我々も指摘し続けているのですが、十分な対応が見られず、歯がゆい気持ちです。

常松:とりあえずはどんなことをすればいいんでしょうか。

佐々木:まずはギリギリまで登録しないことですよね。それから統一地方選挙には、絶対に行ってほしいですね。

小泉:絶対に行ってほしいです。そしてインボイスに反対ならば、制度の導入を進めようとしている議員には絶対に入れない。インボイスの問題点や制度を理解していないとか、「預かり金だから」というような議員は落とすことです。

アツミ:今、インボイス制度の中止や延期を求める意見書が160を超える地方議会から提出されているそうですね。

小泉:市民からの切実な「インボイスの中止を国に求めてください」という声から問題を知る政治家が多いので、陳情はそれだけでもとても意味があると思います。
陳情って、やってみると意外となんとかなるもの(笑)。自分の住んでいる地区で陳情をしてみることで、足元から政治の仕組みが見えてきて面白いですよ。そして何より、政治家に声を届けなければ社会は変わりません。我々からも現在、各地方自治体に陳情を送っていますので、その後押しをしてもらえたら幸いです。一緒にがんばりましょう。

 

3回にわたって深堀りしてきた「インボイス制度」。導入まであと約半年です。仕組みや課題をよく理解したうえで、どう対処していくかを考えてみましょう。

 

 

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取材・文/渥美志保
構成/常松静香(編集部)

 


 

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