父の喜ぶ姿に「この仕事をしていて良かった」と思った出来事


——菅田さんの過去のインタビューを拝見したら、「僕の父親はすごく喋る人だった」と書いてありました。

菅田:そうですね。僕が子どもの頃からコミュニケーションが盛んな家族でした。叱られた記憶がたくさんあって、厳しい父親だったと思いますが、いろんなことに挑戦させてくれた部分では政次郎さんに似ているかもしれません。習い事もたくさんやらせてもらったし、10代半ばで俳優デビューするときも上京する環境を整えてくれました。僕が親だったら子どものことを心配して反対していた可能性もあるから、子どもの意思を尊重してくれた父親は偉大だと思います。

菅田将暉「親バカは子どもにとっての幸せでもある」尊重してくれた父、自身が思い描く家族の愛_img3

——コロナ禍で現代人は「家族と急に会えなくなる」ことの怖さを知り、後悔しないよう日頃から愛や感謝を伝えるようになった人も多いと思います。菅田さんはこれまでどんな方法で親孝行を実践してきましたか?

菅田:僕の父親は吉田拓郎さんの大ファンで。だから吉田拓郎さんと音楽番組で共演させていただいたときに父を連れていったら、めちゃくちゃ喜んでくれました。持参したレコードにサインしてもらっていて、それを受け取ったときに心底喜んでいる姿を見て、「この仕事をしていて良かったな」と思いました。

——昨年の主演映画『百花』も親子の絆が描かれた作品でしたし、今回の『銀河鉄道の父』の撮影中も家族について考える機会が多かったと思います。いずれ菅田さん自身も父親になるかもしれませんが、教育方針は決まっていますか?

菅田:男の子なら深く考えなくても何とかなる気がするんですよ。多少痛い目に会っても「生きてくれていれればいい」って思えるから。でも、問題は女の子の場合ですよね。傷ついてほしくなくて、やりたいことに反対してしまいそうで怖いです。まあ実際は性別を問わず我が子に対してデレデレになって、威厳を保てず、政次郎さんみたいな親バカになっちゃうでしょうね(笑)。
 

<インフォメーション>
映画『銀河鉄道の父』

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宮沢賢治の父である政次郎を主人公に究極の家族愛をつづった直木賞受賞作『銀河鉄道の父』を映画化。岩手県で質屋を営む宮沢政次郎の長男・賢治は家業を継ぐ立場でありながら、適当な理由をつけてはそれを拒んでいた。学校卒業後は農業大学への進学や人工宝石の製造、宗教への傾倒と我が道を突き進む賢治に対し、政次郎は厳格な父親であろうと努めるもつい甘やかしてしまう。やがて、妹・トシの病気をきっかけに筆を執る賢治だったが……。役所広司が政次郎役で主演を務め、長男・賢治を菅田将暉、賢治の妹・トシを森七菜、母・イチを坂井真紀が演じる。2023年5月5日全国公開。


撮影/榊原裕一
ヘア&メイク/AZUMA(M-rep by MONDO artist-group)
スタイリスト/猪塚慶太
取材・文/浅原聡
構成/坂口彩

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