俳優・山田裕貴さんが舞台に立つ――。

舞台出演は、2019年の『終わりのない』以来2年ぶり。実は、しばらく舞台から離れようと考えていたのだそう。

「単純に『終わりのない』が楽しすぎたんですよ。お話自体が普段から僕の考えている世界をそのまま形にしたような内容で。キャストのみなさんにも恵まれたし、もうこれを超えられるものは出来ないのではないかという気持ちになってしまっていました」

そんな山田さんを舞台の世界に導いたものは何だったのでしょうか。12月6日から開幕するPARCO PRODUCE 2021 音楽劇『海王星』のお話を通じて、今最も忙しい俳優のひとりである山田裕貴さんの仕事論に迫ります。

 


やらなきゃいけない気がする、という心の声が聞こえた


「感覚的にですけど、これはやらなきゃいけない気がする、という心の声が聞こえました」

そう山田さんは決断の理由を語りはじめます。

「なんだろう。直感的に一番ビビッと来たのは、タイトル。星が好きだから、『海王星』というタイトルがいいなって」

そんな感覚的な答えも、山田さんらしい。「直感を信じる方ですか」と聞くと「たぶん」とうなずきます。

「もちろん他にもいろいろあります。素敵なキャストさんがたくさんいるなと思ったし、音楽劇という点も歌うことが好きなので面白そうだなとか。あとは『あゝ、荒野』以来の寺山(修司)さんの作品ということにも、ご縁を感じました。そういういろいろなことが積み重なった上で、これはやらなきゃいけない気がする、と心の声が言ってくれたのだと思います」

寺山修司の同名小説を原作とした映画『あゝ、荒野』では、主演の菅田将暉さんと対戦するライバルボクサー・山本裕二を演じました。再びの寺山作品。「僕は寺山さんを語れるほど、そんなに寺山さんの作品を読んでるわけではないですが」と恐縮した上で、不世出の作家・寺山修司についてこう話します。

 

「寺山さんの作品の根底には愛があると感じました。『あゝ、荒野』はボクシングで成り上がっていく男の話ですが、彼らは戦うという行為に、愛されたいんだという気持ちをぶつけていた。世の中には、愛を欲していたり、愛されたいと願っている人はたくさんいると思います。この『海王星』もそうで。僕が演じる猛夫も、父親の彌平も、父親の婚約者である魔子もみんな愛されたがっている。そういう人間の絶対的な感情とか、心の中の欲が寺山さんの作品からは強く感じました」

一流の劇作家であり、一流の詩人でもあった寺山修司。その豊かな感性で紡がれた言葉の数々が、この『海王星』にも散りばめられています。

「たとえば〝紙の月〟というフレーズが出てきますが、きっとそこには〝紙〟だけではなく〝神の月〟という意味も込められている気がして。そんなふうに見えるものだけがすべてではないところが、寺山さんの言葉の面白さ。ただ文字だけでストレートに受け取ってしまわず、この文字にどんな意味があるのか、この本そのものにどんな意味があるのか。書かれていることだけではない何かを探すために、いろいろ考えることが、寺山さんの作品をやる上では合っているのかなと」


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瞳の強さに惹きつけられるーー
山田裕貴さん撮り下ろしカット

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