年上だとか、経営者だとかは関係ない

 

――決して一刀両断しないその姿は、「THE FIRST」はオーディションだけれど「育成プログラム」でもあるという、本で語られていた言葉にもつながる気がしました。とはいえ、自分よりもかなり年下で、しかも個性がまったく違うみなさんをモチベートすることに、難しさを感じることはなかったでしょうか?

SKY-HI 僕が彼らと接している時、前提にあるのは「感謝」なんです。なぜなら、実績がほとんどなかったBMSGの呼びかけに集まってくれた子たちなので。それに、パフォーマンスの動画も何回も見て、僕が相手を「好き」になっている状態から対面のコミュニケーションが始まっているので、会えるだけで嬉しいんです。好きな人にはやっぱり「嫌われたくない」じゃないですか(笑)。だから必然的にコミュニケーションも、一人ひとりの才能に向き合うし、言葉を尽くそうと考えるし、おざなりな態度をとるなんて考えられない。僕の方が年上だとか、経営者だとか、本当に好きになってしまえばそこに年齢や立場は関係ないと思っています。

 

「圧倒的な情熱」は必要だが、分断への配慮も必須


――「THE FIRST」から誕生した7人組ボーイズグループのBE:FIRSTは特定のリーダーを置かず、一人ひとりが思考して「いいものを作れる」空気を作ってほしいとおっしゃっています。年齢や立場に関係なく、「いいものを作れる」チームに必要なのはどんな要素だとお考えですか。

SKY-HI 一つは圧倒的な情熱です。チーム全員が持つに越したことはないけれど、さすがにそれを強制するのはお互いにしんどい。だから、チームメンバーでもいいしチームに関わる外部のスタッフでもいいんですけど、「誰か一人でも異常なレベルの情熱を持っている」ことが大事ですね。それは伝搬していくので。もちろん、強い情熱がチームにいい働きをもたらすかどうかは、環境次第です。人間はそんなに強くないですから、強い熱にあてられると反射的に引いてしまったり、冷笑して受け流してしまうんです。そうして、熱量が高い組とそうでない組で、二分されてしまう可能性もあって。

 

――今おっしゃったことは、会社の組織内でも起こりがちかもしれません。熱量が高い組でどんどん話が進んでいって、意見を言う余地もなく、つい「私はお呼びじゃないんだな」と感じてしまうといいますか……。

SKY-HI だから「いいものを作れる」チームには、先ほどもお伝えした、今いる場所が心理的に安心できて、自分の居場所だと思えることがすごく重要ですよね。チームで一つのものを作るには意見交換が不可欠ですけど、お互いを尊重する。頭ごなしに否定しない。そんな空気があって初めて、熱量が低めの子たちが、熱量が高い子たちの言い分も聞いてみようかなという気になるでしょうし。そうやって受け入れ姿勢を示してくれると、熱量が高い子たちはさらにモチベーションが上がります。本来いい効果を生むはずの“情熱”でチームを分断しないためにも、当然マネジメントする僕も一緒に、彼らの居場所づくりに参加することが大切だと考えています。