極限状態でトラウマを抱えて、精神的に追い込まれる外国人


——難民の方だと、紛争の経験や、殺されるかも、拘束されるかも、という恐怖でトラウマを抱えたりして、精神的な治療が必要という方もいると聞きました。

自分が断ったら、この人は死んでしまうかもしれない。公的制度の空白を埋める現場の限界【入管法改正・仮放免の現実】第三回_img0
写真:Shutterstock

大澤:難民として逃れてきたことで精神的ケアが必要な方と、入管施設収容中に起きたトラウマで精神的ケアが必要な方がいます。日本は難民をケアするのではなく収容するんです。その結果さらに強いストレスにさらされる。入管施設から仮放免として出てきた方の精神科通院に付き添うことが本当に多いんですけど、みなさん同じことを言うんです。
「見張られている感じがする」、とか「何かが聞こえる」とか。あとみんな「痛い」って言うんです。「身体が痛い」って。それでも仮放免だと精神科に行くお金もないのです。
仮放免になった人たちの中には、病気になったから収容を解かれた、という人たちがいます。「病気になったから仮放免になる」と初めて聞いた時は、もう何を言っているのか意味がわからなかったんです。

 

——収容されているときに十分な医療を受けられないのは問題ですが、病気になって施設から出されたところで、健康保険に入れないなら、もっと医療を受けるのが難しくなりますよね。病人を放り出して、でもそのまま放置するような。

大澤:入管の対応としては、病気で収容に耐えられないから外に出します、ということなのでしょう。しかし、仮放免者からすると、病気になって外に出ても何もできないから死んじゃう。実際に亡くなられる方もいるんです。現状は把握されているはずなのですが、なんら対応はされていません。
また、先ほども触れた通り、収容されると精神的な病を負って出てくる人が多いんです。元々病気を持っている人が、施設では満足に治療を受けられず、悪化してしまう。施設では根本的な治療ではなく、対処療法しかしませんから。

——話を聞いていると、入管施設に収容されている方、仮放免の方は終わりがまったく見えないですよね。何年経ったら入管施設から出られるとか、仮放免が終わるとかがわからない。半永久的にこの状況が続くかもしれないという恐怖がずっとある。

大澤:ある東南アジアの出身の来日30年、60代後半の人が、「自分の人生って何だったんだろう」と言うんです。国にいられなくなって逃れてきたけれど、ずっと仮放免で、もう先も長くないだろうしって。
それに対して私はなんとも言えないです。「大丈夫です」とか無責任なことは言えないです。「そうですよね」「大変ですよね」としか言えません。