落ち込んでいるところを、子どもに見せてもいいと思う

 

――坂井さん自身が、娘さんに支えてもらっているなと感じるのは、どんなときですか。

それはもう日々感じますよ。だんだん大きくなってくると、1人でできることが増えてきて。私のお手伝いもささっとやってくれたときなんか、頼もしくなったな〜と思いますし。私が落ち込んでいたら、「いやいや、そんなこと気にしたってしょうがないじゃん」と娘が言ってくれたりするんです。それで、私も「そうだよね」って力をもらうこともよくあります。

 

――ひとみはしんどいときも「大丈夫、大丈夫」と気丈に振る舞うところがありますが、坂井さん自身はわりと娘さんの前で自分の弱い部分を見せられるタイプなんですね。

そうですね。「お母さん今日落ち込んでるよ〜」とか結構普通に口に出しちゃいます。で、娘から「まあそういう日もあるよね」と言ってもらって、気持ちが軽くなるみたいな(笑)。

――そうなんですね。こういう親でありたい、という理想の親像みたいなものはありますか。

自然体がいいな、とは思っています。親も人間ですから、落ち込んでいるところは見せてもいいのかなって。ただ、ネガティブになるときはあっても、最終的には必ずポジティブな方向に持っていくようにしているかも。「こんなお母さんも笑っちゃうでしょ」って、娘と一緒に笑い飛ばしていけるようには気をつけていますね。

 

――そういう意味では、原作者の岸田奈美さんの困難な状況も笑いに変えていくスタンスはどこか通じる部分が。

ありますし、とても共感できます。「一日一善」ならぬ「一日一笑」を座右の銘にしていた時期があって。何でも笑いに変えたら、ちょっと嫌なことがあっても怒らずにすむんですよね。

――自分がわりとネガティブなんで、その思考の癖づけができているのが羨ましいです。

そこはもうなんでも良いようにとるのがいちばんです(笑)。「笑う門には福来る」って本当にその通りだと思うんですよね。たとえば、クタクタになりながら乗ったタクシーの運転手さんがすごいいい人だと、ちょっと元気になれるじゃないですか。そんな感じで、自分が笑顔でいることによって、今日はすごく嫌な一日だったなと思っている誰かが、ほんのちょっと元気になれるかもしれない。そういう幸せのバトンをつなげていきたいという気持ちはありますね。なんかこの話、すごいいい人っぽくてちょっとアレですけど(笑)。

――あはは。でも、すごくいい考え方だなと思います。

この年になってくると、世の中がもっと良くなったらいいなと純粋に思うんですよね。だから、イライラしてる人が多いなと感じるときほど、まずは自分からちょっと優しくなれたらという気持ちで人と接します。おかげで痛い目に遭うときもありますけどね。よかれと思って声かけたら、この人、すっごい怖かった〜みたいな(笑)。