ミモレ世代にぜひ観てほしい映画が誕生しました。それが、5月26日(金)より公開中の映画『波紋』です。
主人公は、「良き妻」「良き母」の役割を真面目に担ってきた主婦・依子(筒井真理子)。しかし、東日本大震災直後、夫・修(光石研)が失踪。老いた義父の介護を強いられ、孤独の中、依子は新興宗教に救いを求めるように――。
数年後。宗教に心の平穏を見出し、幸せに暮らしていた依子の前に突然夫が帰ってきます。そこから広がる、波紋の数々。
水の中で溺れそうになりながらもがくように必死に生きる依子の姿は、さまざまな犠牲と抑圧を強いられる現代女性そのもので。だからこそ、懸命に手をバタつかせながら、やがて光を掴み取る依子を見て、希望と喝采に震えるのです。
いまだ家父長制が根強く残るこの国で、私たちはどうやって生きていけばいいのか。
同じ時代を生きる仲間として、出演者の筒井真理子さん、木野花さん、キムラ緑子さん、そして監督の荻上直子さんに本音を語っていただきました。
光石さんとの場面は、違う人の顔を思い浮かべていました(笑)
――何も言わずに失踪したのち、突然帰ってきた夫。みなさんはこの夫についてどう思いましたか。
木野 台本を読んでるときはムカついてムカついて(笑)。依子がなんで家に入れるのかわからないぐらいに不条理。
キムラ 「お酒ない?」と言い出したときは、「え?!」って言ってしまいましたからね(笑)。
――依子の出したらっきょうを、「変わらないなあ、この味」と言うところなんて憎たらしいくらいでした。
キムラ 「懐かしい」って言ってね。この憎たらしさが、単に図々しいだけじゃなく、背筋がむず痒くなる感じなんですよ。お味噌汁を飲むときも、ニヤッと笑うの。このなんとも言えない憎たらしさを光石さんがまた見事に演じられていて。
木野 この役は光石さんだから成立するんだろうなと思いました。光石さんってもともとがいい男だから。
筒井 チャーミングなんですよね。
木野 嫌悪感だけじゃなくて、ちゃんと笑いに持っていってくれる。そこが憎いというか、救われるというか。
筒井 光石さんが演じると、ちょっと許せちゃうんですよね。だから、一緒のシーンはなるべく違う人の顔を思い浮かべるようにしていました(笑)。
――トップシーンで、依子と修が寝ている場面が描写されますが、あの寝方がまたいいんですよね。上下が逆さまになっていて、依子の頭の位置に修の足があるという。
荻上 お友達が、妻との会話がないからそうやって寝てると言ってたんですよ。
キムラ 寝相とかじゃなくて、本当にそうやって寝てるんだ。この映画、ずっと画が面白いですよね。依子が一心に紫キャベツを切ってるシーンも、なんで紫のキャベツなんだろうと思いながら。
荻上 怖いですよね。紫って、ちょっと狂気な感じがします。
――夫の歯ブラシで洗面台を磨くのも、お友達から聞いたエピソードですか。
荻上 あれはGoogleで「夫 復讐」「夫 仕返し」で検索したらトップに出てきました(笑)。
木野 あれは現実にあるから書いたんだろうなと思った。そうじゃないと思いつかない、あんなアイデア。やりすぎだろと思っちゃう。
筒井 あ、でも知り合いのお母さんがやったことあるらしいです。
キムラ 女の人って怖いですね(笑)。私、そういうのないわ。腹立ったら言うわ、ちゃんと。
木野 たぶん言わないから、ああいうことをしちゃうんだね。
キムラ 依子さんって、すっごい古風な役じゃないですか。ずっと我慢して、自己犠牲して。それは宗教に走るわというのがよくわかりました。
木野 ああいうふうに発散しないで生きていくとさ、行き場がなくなったときに宗教に行くんだろうね。
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