パリ在住のミモレブロガーの大熊洋子さんが長年愛用しているワンピースを紹介します。
フランスの母の日は、日本より少し遅い五月の最終日曜日(ちなみに父の日は日本と同日です)。近所のフローリストは定休日返上で大忙し。ふだん商売っ気のないマダムも、この日のために特別なブーケを束ねて、店をピンク色に染めていた。
店先で出会った素敵なマドモワゼルと束の間のおしゃべり。毎年、ミモレ世代のお母さまにブーケと口紅をプレゼントするんだって。バラ色のほっぺが幸せを象徴しているようで、私には彼女が輝いて見えた。
ウチのお母さんは日本に居るから、彼女が大好きなピヴォワン(芍薬)を買って、パリの自宅に飾ろう、と思った。いや、余計に寂しくなりそうだからやめておこうか。
花屋を出てから近所に住む友人と遅めのランチ。お懐かしや、この花柄のワンピースは、私のパリブログのバナー写真で着用したもの。7年前の写真を見ると、やはりどこかあどけない印象のHirokoさん。同じ服でもどこか印象が違うような。
この日は気温が30度近くまで上がるという最高の天気予報だったから、嬉しくなってこのドレスを引っ張り出したってワケだけど、それにしてもちょっと気が早すぎたかな。
肩甲骨がすべて見える、背中が大きく開いたデザインがポイント。極細の肩ひもが華奢で、フェミニンな雰囲気が大好き。既にかなり日焼けしているのと、ダンスで鍛えている背中は、肌見せをしても生々しくならないでしょ。あれ? 見返り(不)美人さん!?
さて、ここで「背中の開いたデザイン」の時のインナー問題が勃発! Hirokoさんのコーデの常連さん達は、もう答えが分かっていらっしゃるでしょうか。はい、潔くノーブラです。ドレスが二枚仕立てになっているのと、胸のラインを拾わないふんわりとしたシルエットなのでブラジャーは着けなくても大丈夫。
かつては、「そんなに美しいバストラインを、何故ブラジャーで隠そうとするの?」なんて、馴染みのブティックの販売員さんに逆質問されて戸惑った経験がある。今の私は、何の抵抗もなくこのドレスにはノーブラを選ぶ。スタイルとは、服そのもののことではなく、むしろ着こなし方やメンタリティにこそ宿るんだ、と思う今日この頃。
足元には、Hirokoさんのコーデではお馴染みのミシェルヴィヴィアンのサンダルを初おろし。これは例のプレスセールで手に入れたやつね。
カーキ色の極太ベルトにはパンチング加工で無数の穴があいている。イタリア土産に頂いたもので、自分では絶対に選ばないタイプの品物が、今や一番のお気に入りになったりするから不思議だ。
ランチが終わって帰りがけ、照りつける太陽に涼しい風が優しく肌を撫でる。こんなささやかな一瞬に、私は生きている実感が湧き胸がときめく。やっぱり花屋に戻って、大輪のピヴォワンをお母さんに買って帰った。
構成/幸山梨奈
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