日本は国土が狭いので人口密度が高いと思っている人が多いと思いますが、実はそうでもありません。確かに日本全体を見れば、国土に比して人口が多いのですが、諸外国は都市部に人が集中して住む傾向が強く、農村には農業従事者以外あまり住んでいません。東京都心部の人口密度はパリやニューヨークなどと比べると圧倒的に低く、人々が広い範囲にバラバラに住んでいるのが日本の特徴です。 

「カエルの声がうるさい」ナナメ上の苦情からわかる、日本社会の変化とは_img0
写真:Shutterstock

かつて、フランスから政府関係者が日本にやってきて新幹線に乗ったところ、いつまでたっても住宅や工場が続くので「東京というのはとても広いのですね」と浜松近辺で感想を漏らしたという笑い話がありました。日本は広域に人が分散して住んでいる国であり、諸外国と比較すると田んぼと住宅が隣接する確率が高いことが分かります。

 

最近は田舎暮らしや移住ブームで、都市部から田舎に引っ越す人も増えているようですが、小川のそばに住んだところ、川のせせらぎがあまりにもうるさくて眠れないという事例が多発しているそうです。体験したことがない人にとっては、風が強い日の森の音も驚きかもしれません。

今はライフスタイルが多様化していますから、社会を構成するメンバーがまったく同じ体験や感覚を持っているとは限りません。こうした環境下においては想像もしなかったことが苦情の対象となる可能性がありますから、住宅を紹介する不動産会社や、移住を誘致する自治体などは、積極的に情報を発信する工夫も必要となるでしょう。

以前、このコラムで子供の声がうるさいことをきっかけに公園廃止を求めた人がバッシングされた話題を取り上げたことがあります。


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苦情の内容が一般常識とかけ離れているからと言って、苦情を出した人を一斉にバッシングするといった行為に及べば、それは暴力的なクレーマーと何も変わらなくなってしまいます。クレームに対しては一般常識に照らして、是々非々で、粛々と対応すべきであり、感情に任せた行動は禁物でしょう。

多様化した社会においては、自分の感覚とはまったく異なる人とコミュニケーションを取る必要が出てきます。クレームを付ける側も受ける側も、一歩立ち止まって、自分の常識は相手にとっても常識とは限らないことを思い返すことが大事です。
 

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前回記事「組閣ゴッコや家系図アピールで「世襲」に批判噴出。一部の“2世”たちが自覚していない本当の問題は」はこちら>>

 
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