毎日、体のどこかが痛い。寝ても疲れが取れない。男女問わず40代以降の悩みです。仕事や家事に明け暮れ、自分の体のことをなおざりにしている皆さんにお届けしたいのが、中年セルフメンテナンスがテーマの『すこしだけ生き返る』。1巻が6月29日に発売されました。
間敏郎(はざま・としろう)、42歳、弁護士。事務所を持ち自分の裁量で仕事をできているけれど、最近は肩が痛くて頭が回らないのが悩みです。
ならば、と肩を回すストレッチをしていると、事務員の山村あかりに見られそうになり、とっさに動きを止める彼。若い人の前ではストレッチしたくない中年心、わかります。年齢を感じさせる仕草の一つですものね。
今日何かあった気がするが、どうしても思い出せない彼は、裁判所で原告代理人の仕事中も肩が痛くてしかたない。
肩こりに悩まされる彼は、整形外科の治療の真似事をしてみたり、依頼人が肩をおさえている様子を見て「肩入れ」してみたりとあれこれメンテナンスを試みます。
肩だけでなく、腰も痛いし、階段をのぼるのが前より辛くなってきた敏郎。湿布や消炎鎮痛剤のCMそのまま。気を散らす体の痛みを自分でなんとかしようとする彼に、事務員のあかりがちょっとしたストレッチのアドバイスをします。すると、ちょっぴり楽に。身体機能が下り坂なのを感じている敏郎でしたが、その下りゆくグラフを「すこしだけ」上昇させてくれるのがストレッチでした。「すこしだけ」ですが。
ミモレ読者なら「肩のストレッチのやり方くらい、もう知っていますよ」という方が多いと思いますが、ストレッチって地味な動きなのでついサボりがち。その場で1分くらいですぐできるのに、なんとなくやらなくなっている。そして、知った気になっているパターンもありますよね。
運動もそうですがストレッチって自分一人でやっていると、無意識でだんだん自分が動かしやすい方向にフォームが崩れて、自己流になってしまうものです。
今一度、自分のストレッチを見直してみませんか。見よう見まねや、やりやすいように自己流になっていたのを少し腕の角度を変えてみるだけで、敏郎のように今まで知らなかったスッキリ感に出会えるかも。
これって、人生も同じかもしれませんね。
敏郎は、自分の事務所で誰からも突っ込まれない状態で仕事をして生きていますが、彼が生き返る瞬間というのが、あかりにストレッチのコツを教わった時や、同年代がエスカレーターではなく階段を使うのを目にした時なんです。
中年になると誰かに新しいことを教わる瞬間って少なくなります。
あなた、ストレッチだけじゃなく仕事や生き方も自己流になりすぎていませんか?
っていうメッセージも伝わってくるんですよね。
中年男性が言葉少なく孤高に楽しむ、といえば『孤独のグ⚪︎メ』。言うならこちらは、孤独のセルフメンテナンス物語。グルメ漫画はあの作品を筆頭にだいぶ流行りましたから、メンテナンス漫画が次にくるかもしれませんよ。どちらも読者の五感に響いて「美味しそう」「気持ちよさそう」と感じる共通点がありますから。
なんなら、ストレッチならお金をかけずに身一つでどこでも真似できますよ。
メンテナンス漫画の流行の予感⋯⋯そのきっかけになりそうな本作で、まずはさぼっていたストレッチのやり方を見直してみませんか?
『すこしだけ生き返る』1話〜3話を試し読み!
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<作品紹介>
『すこしだけ生き返る』
うすくら ふみ (著)
間敏郎(42)。職業、弁護士。
自分の事務所を持ち、自由気ままに生きる間。
そんな彼には、最近ずっと悩みがある。
それは、肩が痛くて頭が回らないこと――
これは、気づけば中年になった男が、気づかなかった自身の体のほころびに気づき、せっせとメンテナンスにいそしむ健康指南書⋯⋯である。
構成/大槻由実子
編集/坂口彩
作者プロフィール
うすくら ふみ
第83回新人コミック大賞入選。受賞作『メタモルフォーシ人』で、2019年に月刊スピリッツにてデビュー。『絶滅動物物語』の作者。現在週刊スピリッツにて『すこしだけ生き返る』を連載中。
Twitterアカウント:@UsukuraFumi