【ドラマ化】暗殺拳「北斗神拳」を独学。憎い奴を殺すつもりが、カリスママッサージ師になっていた男の話。【バカリズム脚本】

現在、40〜50代の人なら、一度は「お前はもう死んでいる……」という『北斗の拳』（集英社）のモノマネをしたことはないでしょうか？（私はあります） 主人公のケンシロウは一子相伝の暗殺拳「北斗神拳」の伝承者で、核戦争後の弱肉強食の世界で戦い続ける物語。「北斗神拳」は、経絡秘孔（架空の人間の急所）を喰らった本人でさえ、自分の死に気づかないほどの恐るべき技。果たして、体に張り巡らされるように存在するツボの中には、本当に死に至らしめるツボはあるのでしょうか？　ヤングマガジンで連載中の『ケンシロウによろしく』は、講談社の作品ながら、がっつりと集英社の名作漫画『北斗の拳』が登場している、異色の作品。2020年の連載開始からじわじわと巻を重ね、今年とうとうバカリズムさん脚本でドラマ化が決まりました！ まだ本作を読んだことがない人は、今こそ手に取ってほしい、清々しいまでにバカバカしいギャグマンガです（褒めてます）。

子を捨て、男に走った母。息子は『北斗神拳』で復讐を誓う！

主人公の沼倉孝一が10歳の時、唯一の家族である母を失いました。病気や事故でこの世を去ったのではなく、息子よりも恋人のヤクザ・木村を選んで家を出ていっただけなのですが⋯⋯ 。

沼倉少年の憎悪の矛先は、自分を捨てた母よりも、ヤクザの木村に向けられました。当時愛読していた『北斗の拳』で、ケンシロウが経絡秘孔（ツボ）を突いて敵を殺していたことから、少年もケンシロウのように「北斗神拳」を会得すべく、厳しいトレーニングを自らに課します。

母がいなくなってから10年後、20歳になった沼倉は、ケンシロウのような肉体と、（マンガで習得した）技を手に入れます。そして、向かう先は木村のもと。渾身の技を繰り出し、「お前は3秒後に死ぬ」とケンシロウのように告げますが、当然のことながら、何の変化もなく、あっさりと木村と護衛にボコボコにされてしまいます。

マンガの『北斗神拳』だけでは、正確なツボがわからないことに気づいたケンシロウは（もっと早く気づこう！）、ツボの猛勉強に励みます。人体解剖学、骨や筋肉の研究、中国やタイのツボなどを極めつつ、合間に『北斗の拳』を読んでいるうちに、晴れて国家資格の「あん摩マッサージ指圧師」に合格。

そのまま開業し、ここに暗殺拳「北斗神拳」伝承者ではなく、ただの『北斗の拳』マニアにしか見えない、史上最強の凄腕マッサージ師が誕生したのです！

果たして沼倉は、ヤクザ・木村をツボで殺せるのか？

この『北斗の拳』をパロディにした一発ギャグ的作品が3年間も続き、とうとうドラマ化されるという奇跡！　沼倉は、40歳を超える頃には４つの資格を習得し、並のマッサージ師なら匙を投げるような患者も、凄腕施術で確実に回復に導きます。幼い頃からの憎きヤクザ・木村を殺すべく、暗殺術を身につけるつもりが、人々の不調を的確に見抜き、逆に感謝される存在になっているという大いなる矛盾！　ちなみに沼倉が施術する時に登場するツボはすべて実在のもの。ギャグに笑いつつも、ツボの知識も得られるというお得要素もあり。

また、『北斗の拳』を聖典のようにあがめ続けてきたために、思考回路の根幹が完全に『北斗の拳』になってしまっており、周囲の人から見れば、単なる変わり者にしか見えないのだけど、実力が伴っているのだから問題なし。実際、スポーツ選手や超大手企業の経営者など、そうそうたる顧客を持ち、実は稼いでいる様子。それでも、沼倉にとっては、ツボで人に気づかれることなく、ヤクザの木村を殺すことが第一の目的であることには変わりありません。

沼倉は、客として訪れた風俗店で、坂本里香という女性に出会います。彼女は、交通事故で寝たきりになった父を持ち、指圧師を目指して専門学校に通う傍ら、風俗店で働いています。小さい頃からマッサージに自信があり、風俗店でもマッサージのおかげでリピート率100％を誇っていました。しかし、プロから見れば里香の中途半端なマッサージに怒りを覚えた沼倉は、自分が客なのに、里香に“本物のマッサージ”を施します。里香はその素晴らしさに感動。沼倉がちょっとやべー奴と思いつつも、弟子入りを志願します。彼女は見た目からユリア的であるものの、沼倉へのツッコミ役として、いい味を出していくことになります。

著者のジャスミン・ギュ先生の前作は、『Back Street Girls』。仕事でヘマをやらかした３人の若手ヤクザが、組長の思いつきで全身整形させられ、女性アイドルグループ「ゴクドルズ」としてデビューしたところ、なぜかそのアイドルに人気が出て……、という、これまたインパクトのある設定から始まった名作ギャグ作品です。こちらも全12巻と息の長い作品となり、アニメ、映画化まで果たしています。

この先、沼倉の執念が実を結んで、長年の宿敵・木村が店を訪れ、施術をすることになります。ツボで暗殺するには最大のチャンスが訪れるのですが、衝撃の事実が明らかに……。沼倉の選択やいかに？

いや〜、とにかくこのバカバカしさには老若男女を問わずハマるはず。名作『北斗の拳』にがっつり乗っかった設定を考えただけですごい。芸人でありながら、数々のドラマや映画の脚本に関わるバカリズムさんが、ドラマ化されるこの作品をどう表現するのか、期待が高まります。ドラマ化の前にしっかりと予習しておきましょう。ちなみに『Back Street Girls』のキャラクターも登場するのでこちらもお楽しみに。

【漫画】『ケンシロウによろしく』第１話を試し読み！
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