問題を「家庭の中に閉ざさない」社会へ
小澤:市民性について学ぶプログラムでは、「見つめて、受け取って、働きかける」ということを大事にしています。自分の暮らしに映ること、地域での営み、社会に起きていることを丁寧に見つめてみると、見ていなかったことが目に映ったり、視野が変わったりします。そして、街の中にいろんな発見や出会いがあり、「あんな子がいたんだな」と気づいたりする。相手にとってももしかしたら、「ちゃんと自分のことを見ている人がいるんだな」と思えたり、「真剣に自分のこと考えてくれてるかもしれない人がいるんだな」という感覚にも繋がるかもしれない。
例えば、一緒に泥んこ遊びをしたり、アリをずーっと観察している後ろで温かく見守っている大人がいたり、パンをこねるという体験をしたり。私たちはそんな時に、一緒にいた人の記憶だけではなくて、砂のサラサラした感覚とか、草むらの感触とか、美味しそうな匂いとか、そういった“温かさのある感覚”みたいなものも一緒になって覚えているかもしれません。そういう感覚も含めて、私たちの記憶に残り、時にそれが心の拠り所となる風景となっていくことがあります。
だから、体験や感情を安全に一緒に共有できるような、そんな人の存在や、何かを共有している感覚がとても大切なのではないかと思います。
――何か大きな行動を起こすとかではなく、「気にかける」ということからだったらできるかもしれないですね。
小澤:子どもだけでなく、保護者にとっても、「ここにいて大丈夫、一人じゃないんだ」という感覚が必要かもしれません。今の社会構造上、さまざまな課題や困難なことがあった時、それを家族だけでなんとかしなければいけなくなるような構造ゆえに、家庭の中に閉じざるを得ないような状況です。
だからこそ、例えば、バスや電車の中で子どもが泣いている時に、自分の後ろで誰かがあやしてくれた、という体験は、「自分だけでなんとかしないといけない」という緊張が少しだけ解けるような体験になるかもしれません。「家族でなんとかしてね、あなたがなんとかしてね」といったメッセージではなく、「一緒に考えたい。私たちのことでもある」というメッセージが身近にたくさんあることが、誰にとっても「社会を信頼していいんだな」と感じる一つの入口になるかもしれないとも思うんです。
<「何かアクションを起こしてみたい」と思ったあなたへ>
「Citizenship for Children」プログラムとは
PIECESが主催する「Citizenship for Children」は、「市民性」を起点に、自分らしいあり方を探求・実践するプログラム。一人ひとりが自分らしい市民性を醸成し、行動できるようになることで、子どもと自分、地域のウェルビーイングを作ることを目的としています。ここでいう「市民性」とは、「自分にできることで子どもや地域・社会と関わりたい」という心の灯火のことを指しているそう。
今期のプログラムは2023年8月からスタート。探求コースの〆切は7/23、基礎コースの〆切は8/18となっています。募集説明会の録画視聴ができますので、気になる方はぜひPIECESサイト、および「2023年募集説明会申し込み」にアクセスしてみてください。
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「見えない心の傷にハンカチは差し出されづらい」。10代の死因の中で1位が自殺、子どもの“心の孤立”を今考える【小澤いぶきさん】」>>
取材・文/ヒオカ
構成/金澤英恵
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