本来、頬のピンクは「血色」なので、大人を若々しく輝かせて見せる色。だけど、「若作り」に見えるからと、なかなかピンクのチークに手が伸びない人も多いようです。では、「若々しい」と「若作り」を分けるものとは一体何なのでしょうか? 今回も、メイクアップアーティストの水野未和子さんと考えます。
第1回「美しい笑顔とは、「上手に笑ってみせる」ことではない。「人の心を動かす」ほど、自分を解放した生き方を見せること【水野未和子】」>>
第2回「メイクはもっと自分ありきでいい。大人のシミやそばかすも生かし、ライブ感を吹き込むオレンジチーク【水野未和子】」>>
メイクアップアーティスト 水野未和子
オレゴンに留学後、イギリスに渡り、London College of Fashionでメイクアップを学ぶ。卒業後、フリーランスのメイクアップアーティストとしてロンドンでキャリアをスタートし、帰国後は多くの雑誌や広告、CMなどを手がける。人によって違う、その人だけの魅力をディファイン(明確に)するメイクに定評があり、数々の女優やモデルが厚い信頼を寄せる。そのメソッドをまとめた著書『ディファインメイクで自分の顔を好きになる “私だけの魅力”が絶対見つかる自己肯定メソッド』が好評発売中。
【Instagram】@mizuno.miwako
ポッと紅潮したピンクの頰で
思いっきり笑える自分に!
1回目の記事では本物の笑顔について、そして2回目の記事ではそんな笑顔に似合う、顔の雑味を生かしたサンタンメイクについてお伝えしました。部分的な「ポイントメイク」とは違い、顔全体の印象を変え、ライブ感を吹き込んでくれるチークメイク。「この顔好きかも」とそんなふうに思える自分でいられるメイクの提案です。そして第3回となる今回ご紹介するのは、とびきりの笑顔にぴったりのピンクのチークメイクです。実はピンクはどんな年齢の方にも似合う色。ピンクに染まった頬は、自分自身が元気になれるだけでなく、見ている側まで元気をもらえます!
少し上気したようにピンクに染まる頬って、いくつになっても女性を幸せそうに見せてくれるといつも感じます。何か嬉しいことに出会ったり、照れくさくはにかんだり、ワクワクすることに胸を膨らませたりして頬が紅潮するあの感じ。昔の映画でも女性が好きな男性と会う直前に、頬をギュッとつねって血色感を出すというシーンがありますが、頬の血色感はいつの時代も年齢を問わず、女性をひときわ魅力的に映します。
ピンクのチークは、そんな高揚感を感じさせる頬、そして表情までを再現してくれる最高のアイテム。まさに「自分本来の笑顔」を思い出させてくれ、引き出してくれるもの。ひと掃けするだけで、沈んでいた顔色も表情もパッと明るくなるんです。
みなさんは普段チークを選ぶとき、ピンク、そのなかでも特に青みを含んだようなはっきりとしたピンクを「若作りに見えるから」「似合わないから」と敬遠していませんか? でも、今回のモデルさんにも青みを含んだピンクのチークを使っているのです。どうですか? パッと顔全体の印象が明るくなり、生き生きとして見えますよね。
チークを「肌なじみがいい」というポイントで選ばれている方も多いかもしれません。でも、ピンクの色味はスモーキーな、あまりにも肌になじみ過ぎる色を使うと、美しい血色感が出づらいのです。一見、大人には難しそうに思えるはっきりとしたピンクも、入れ方次第でとても素敵で自然に仕上がります。フワッと頬にのせてみると案外程よい血色が出せるものです。
「若作り」に見えるか「若々しく」見えるか。
その差をつけるものは、「肌作り」です
それは何も、「イエベだから似合わない」「ブルベだから似合う」という類のものではありません。しかし、多くの人がこの基準に囚われ過ぎて、本当に好きな色を選べていないように感じます。私たちアジア人の肌には多かれ少なかれ全ての色が入っているし、私自身も、いつも「なりたい肌感」や「なりたい女性像」に合わせ色をチョイスしています。どうか、この縛りで自分の可能性を狭めないでほしいと思います。それでもこの枠をはみ出すことに苦手意識のある人は、たとえば青みピンクにも発色や彩度のシェイドに幅があるので、まずはぜひ肌にのせてみて、自分に似合うものを見つけてみてくださいね。
本来ピンクは「血色」なので、顔色をよくして元気に、若々しく見せてくれるもの。大人が生かさない手はないのです!
一つ注意したいのは、大人のピンクチークは作り方によっては「若作り」をしているように見えてしまうこと。では、どうして同じものを使っても、「若作り」と「若々しく生き生きして見える」に二極化してしまうのでしょうか。
私は、その差を分ける一つの要因は、ベースの作り方にあると思います。前回の話にもつながりますが、「若く見られたい」というマインドは、「肌の老化を、アラを隠したい」という思考につながるため、完璧に肌を作り込みがちです。シミやシワを隠すために厚ぼったくファンデーションを塗ったり、白過ぎる色を使ったり、あまりにもツヤツヤとしたベースに仕上げたり、テラテラとハイライトを広範囲で入れたり……。こんな隙のない肌に可愛らしいピンクのチークを重ねてしまうと、いかにも「若作り!」という印象に。
顔の表情はその人自身の人となりを語りますが、メイクはその人の思考的主張が透けて見えるもの。目的の最優先事項が「若く見られたい」ということで、アグレッシブかつ自発的なその意欲がメイクよりも前に出てしまうと「若く見せるためのメイク」という印象だけがどうしても残ってしまいます。
そうではなく、自然に補整したくらいの肌のほうが、顔全体のバランスとしてピンクだけが浮かず、大人の余裕さえ感じられます。自分のシミもシワも年齢も丸ごと受け入れ、胸を張って堂々と前を向いて生きている大人のメイクは、聡明で自分らしく、自分の延長線にある「素敵」を大事にしているように見えるものです。
自分を丸ごと受け入れて認められる人は、他者さえも丸ごと受け入れて認められる視野の広い人。「若く見られるためのメイク」を目指すことは、本当の意味で、自分のことを肯定できているとは言えません。そしてそれを手放せない人は、他者にも同じような視線を向けてしまうため、自分以外の人も認めることができないのだと、私は思います。
そこでまずは、自分を丸ごと受け入れるメイクで、いまの自分の魅力に気づいて、笑顔になってほしい。次のページからは、大人の魅力を引き出すピンクのチークメイクについて具体的な方法をお伝えしますので、ぜひ、まず軽めに整えた肌の上に挑戦してみてください。
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