4回にわたってお届けしてきた、水野未和子さんの「大人のチークメイク」企画。最後にご紹介するのは、ブラウンチークとハイライターを駆使して、光と影を操るメイク。光の効果で引き立たせたいところをグッと前に引き出し、影の効果で削ぎ落としたいところを引っ込めることで、その人の輪郭をはっきりさせ、凹凸を掘り起こし、その人本来の魅力を際立たせるメイクです。
第1回「美しい笑顔とは、「上手に笑ってみせる」ことではない。「人の心を動かす」ほど、自分を解放した生き方を見せること【水野未和子】」>>
第2回「メイクはもっと自分ありきでいい。大人のシミやそばかすも生かし、ライブ感を吹き込むオレンジチーク【水野未和子】」>>
第3回「ピンクのチークは若作りになる?いいえ、ピンクは大人が大切にしたい「血色感」に!【水野未和子】」>>
メイクアップアーティスト 水野未和子
オレゴンに留学後、イギリスに渡り、London College of Fashionでメイクアップを学ぶ。卒業後、フリーランスのメイクアップアーティストとしてロンドンでキャリアをスタートし、帰国後は多くの雑誌や広告、CMなどを手がける。人によって違う、その人だけの魅力をディファイン(明確に)するメイクに定評があり、数々の女優やモデルが厚い信頼を寄せる。そのメソッドをまとめた著書『ディファインメイクで自分の顔を好きになる “私だけの魅力”が絶対見つかる自己肯定メソッド』が好評発売中。
【Instagram】@mizuno.miwako
魅力>美人。
自分らしさの延長線上にしかない「魅力」とは?
過去3回の記事でもお伝えしてきたように、美しさの基準は一つではありません。時代は変わり始め、今では当たり前に「多様性」という言葉も聞かれるようになりました。さらにメディアでは「自己肯定と美容の関係」といった文言もよく目にします。
でも、その中身は何も変わっていないように思うんです。いつの間にか刷り込まれた「美人」という理想の枠。そこに当てはめるために、メイクアップのトレンドやテクニックを追わせてばかりです。だけど、他者と比較した自分への評価から始まる美容からは、そもそも自己肯定感は生まないと気がついてほしい。
美しさの基準をもっともっと自由に! 美しさの本質とは日々を楽しく生きる力を持つこと。自らを無限に解放できる強さを持てる人は、他者とは比較できない程に輝き、美しさに満ちています。
私自身歳を重ね、まわりを見ていて深く納得がいくんです。造形の美しさは年齢と共に衰えますが、魅力は奪えないどころか増していきます。リプレイスメントも真似もできない、エイジングからも奪われないものこそが、まさにその人だけの魅力。自分の魅力を育めるかは、この連載で何度も言ってきたように、「心の底から笑えているか」ということに尽きる。たくさんの経験を積んだ大人は表情に、笑顔にその人となりが出てくるもの。そしてそれがやがて、その人だけの「顔」になる。
美しさとは、その人らしさが生んだ「強さ」に違いないのです。自分が持っていないものを数えたり、追いかけたりしても何も生みません。それよりも今自分が持っている魅力に気づいて、それを際立たせることのほうが、自分にも優しくて有意義だと思いませんか? 忘れないでいただきたいのは、素敵な笑顔も、素敵なメイクも「その人らしさ」の先にしかないということ。周囲と歩調を合わせて安心を求めることや、他人からの評価といった執着を手放すことが、自分を解放するということ。自らのあり方を選び取る勇気は同時に自己責任でもあり、これこそが自分軸を持つということなのだと思います。日々、今の自分に正しく期待して、大切に「らしく」生きることが、しなやかに、年齢さえも味方につけ魅力を増していくことにつながるのではないでしょうか。
そして、メイクを通して、一人ひとりが持っている目鼻立ちを含めた自分の個性が魅力だと気づけたら、その延長線上にある「素敵な自分」をもっとたくさん見つけられるのだと思います。そこで私が提案したいのが、顔に落ちる光と影のコントラストで輪郭を際立たせ、顔の凹凸を掘り起こして一人ひとりの個性を鮮明にする「ディファインメイク」です。このメイクが自分の魅力に気づけるきっかけになってほしいと思います。
一般的には、光と影を操るメイクを「コントゥアメイク」と呼んだりします。「コントゥア」とは輪郭のこと。一方、「ディファイン」には、「明確にする、明らかにする」といった意味があります。私がこのメイクをディファインメイクと呼んでいるのは、輪郭や骨格を際立たせて、ボヤけてきた輪郭をシュッと引き締めて見せること以上に、それぞれの個性をもう一つ前に出して明確にしてほしという思いがあるからです。私はみなさんに、この光と影のメイクで、顔の輪郭や凹凸と共に、自分自身の存在の輪郭までも明確にし、讃えてほしいのです。
こう聞くと、なんだかものすごく高尚で難しいメイクに思われるかもしれませんね。でもそんなことはありません。実際はとってもシンプルです。次のページから、そのやり方を詳しく見ていきましょう。
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