誰の人生にも「物語」があります。
人は、成仏できない物語があると辛い気持ちになり、前向きな物語を描けないと落ち込んだりモヤモヤしたりします。
この連載では、心理学者でキャリアコンサルティング技能士の杉山崇先生が、「物語」という名のライフキャリアを整える方法を皆さんにお伝えしていきます。
私は中高校生から中高年まで多くの方々とお話する機会があります。そこで、感じるのは最近、専業主婦に対する少々ネガティブなイメージが広がっているということです。
多少、肯定的なものとしては「子どもなど家族のために仕事を辞めた人」というものもあります。このイメージなら家族を大切にするイメージが伴っています。一見、ネガティブではありません。
ただ、「仕事を辞めた」というニュアンスに注目されると、話が変わってきます。なぜかわかりませんが、途端にネガティブな印象で語られ始めます。
また、中には「稼いでない人」、「社会との接点やネットワークがない人」などというイメージを口にする方もいらっしゃいます。このように「ない」に注目すると、もう明らかにネガティブな印象ですね。また、「仕事より家にいることを選んだ人」という、仕事から逃げているイメージを口にする方もいらっしゃいます。
もっと最悪なのは、中学生(タイプミスではありません)以上の男性に多いのですが、専業主婦を「誰でもできること」のように言うことです。こういう男性には「専業主婦の業務があなたに務まるの?」と言いたくもなりますね。
私の印象ですが、こういう男性の大半は専業主婦を1日でもやろうものなら、洗濯機から大量の泡が吹き出す、トイレの排水が巻き散らかされる……などの大惨事を招きそうです。誰でもできる、などというイメージは絶対にやめていただきたいですね。
これらのネガティブなイメージは全て不当なものです。専業主婦のみなさんは気にすることはありません。
ただ、卑下され続けると、それにリアクションしてしまうのが人間です。実際、専業主婦であることに引け目を感じる……ということで引きこもり気味になる方が増えているとも言われています。
私の周りでも、専業主婦であることで自己肯定感を持てない、孤独感や虚しさを感じる⋯⋯ とカウンセリングの中で訴える方は多いです。その中には「自分は働いていた頃と何も変わっていないと思っている。でも、周りから(仕事や稼ぎがないことで)、価値がないように扱われると、ジワジワと心が削られる……」などと語られる方も……。本当に悲しい現実です。
ここまで、お読みになっていかがでしょう。なんだか、モヤモヤしませんか?本当にもう、専業主婦が卑下の対象になってしまうのはおかしいですよね。
ちょっと、過激な表現になってしまうかもしれますが、実は専業主婦とは、近代化によって誕生した「歴史的に最も進んだ存在」です。価値ある存在なのです。そこで、ここからは現代社会では見落とされがちな専業主婦の本当の価値をご紹介したいと思います。
専業主婦の価値というと家事労働が思い浮かべられやすいようです。人気を博したドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』の中で星野源が演じる主人公が月給として試算したりもしているので、思い出した方もいることでしょう。
この他にも家事労働は内閣府も時給や年収の形で試算したり、アメリカでも似たような試みがあります。みなさん、専業主婦の価値と言うと家事労働のイメージが強いようです。
しかし、これも専業主婦の本当の価値を表していません。専業主婦の本当の価値は家族にお金で買えない数々の財産を与えることなのです。
実は近年、幸せの正体を解き明かそうという科学的な試みが増えています。その中で注目されているのが、お金で買えない財産である「非地位財」です。いろんなものがありますが、愛情、帰属意識、プライド、健康、自由、安全……などなどが代表的なものです。
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