今の社会では、障がいを持っていると働き方が限られる、なかなか特性を理解してもらえない、能力を活かせる仕事が見つからないといった現状があります。そんな中、ゲーム・アニメ事業などに加え、最近ではメタバースにも力を入れているグリーの特例子会社として設立された「グリービジネスオペレーションズ」(以下、GBO)は、障がい者雇用を積極的に行っており、従業員のほとんどが精神・発達障がいを持つメンバーで構成されているそうです。GBOが担う業務は200種以上。その中にはもちろん、単純作業だけではなく高度な業務も含まれます。同社が考える「障がいを持った人が能力を活かせる職場」とは――? 社長の山本千晴さんにお話を伺いました。
山本千晴(やまもと・ちはる)さん
グリービジネスオペレーションズ株式会社 代表取締役社長。神奈川県生まれ。早稲田大学法学部、同大学大学院法学研究科博士前期課程 修士(法学)、同大学大学院法学研究科博士後期課程(単位満期取得退学)、Albert-Ludwigs-Universität Freiburg留学。グリー株式会社 人事部長を経て現職。
メンバーが「体調を整える時間」も確保する
――御社では精神・発達障がいの方を雇用されていらっしゃいます。一人ひとりそれぞれのご事情があり、フルタイムで働くことへの適応が難しいケースもあると思うのですが、どのように調整されているのでしょうか。
山本千晴さん(以下、山本) メンバーには精神障がいの方、発達障がいの方、発達障がいの二次障がいとしてうつを発症されている方もいます。もちろん事情は一人ひとり違いますが、1日8時間・週5日の勤務は、障がいの有無にかかわらず、「ちょっとキツイな」と感じることがある人は多いのでは。やはり弊社のメンバーにとってもハードルが高い。ですので、1人の作業量の上限を「約7割」に設定して、メンバーの仕事内容を組み立てています。
――作業量をフルにせず約7割にしておくのは、残り3割で「余力を残しておく」ということでしょうか?
山本 やるべき仕事が山積みだとどうしても心の余裕がなくなって、本人が望まぬ不調をきたすことにもなりかねません。ですから私たちは、メンバーたちが仕事をする上で「体調を整える時間」の確保も大切だと考えています。もちろん工数管理は徹底しているので納期に間に合うよう進めますし、もしメンバーに何かあればマネジャーがサポートもしっかり行なっています。
※GBOではお昼休憩と15分の一斉休憩に加え、任意で30分の休憩が取得できる。また、出社時と退社時に業務整理の時間も確保される。
何を書いてもいい「日報」がコミュニケーションの場
――メンバーの皆さんの状況把握はどのように行なっていらっしゃるのでしょうか。
山本 日々の業務や体調の不調については「日報」という形で共有してもらって、各チームのマネージャーが把握しています。これはメンバーに無理が出ないよう、細やかに調整するためでもあります。日報は進捗管理の役割もありますが、体調やコンディションを把握する役割もあるんです。いつもは書けている日報が書けていなかったら「どうしたんだろう?」と思いますし、変化に気づければマネージャーもフォローできるので。
フルリモートになって雑談をする機会が減ったぶん、日報は大事なコミュニケーションの場なんですね。だから日報には何を書いてもらってもよくて、「こう書きなさい」みたいな杓子定規なルールは設けていないんです。
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