ゲーム・アニメ事業などに加え、最近ではメタバースにも力を入れているグリー。その特例子会社として設立された「グリービジネスオペレーションズ」(以下、GBO)では、精神・発達障がいを持った人が自分の能力を活かしながら働けるように、様々な取り組みが行われています。そんなGBOの社長・山本千晴さんに、全ての人が働きやすい職場を作るためのヒントを伺うこの企画。インタビュー第2回目は、「雇用において多様性を実現するとはどういうことか?」という大きなテーマについてお話を伺います。

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「他者への不寛容さは、安心感によって薄まっていく――障がいを持つ人もそうでない人も「能力を活かせる職場」とは」>>

 

山本千晴(やまもと・ちはる)さん
グリービジネスオペレーションズ株式会社 代表取締役社長。神奈川県生まれ。早稲田大学法学部、同大学大学院法学研究科博士前期課程 修士(法学)、同大学大学院法学研究科博士後期課程(単位満期取得退学)、Albert-Ludwigs-Universität Freiburg留学。グリー株式会社 人事部長を経て現職。

 

「平均点を求めない」評価制度を作りたかった


――多様な特性を持ったメンバーを「人事的に評価」するには工夫が必要だと思いますが、御社ではどのように行なっていますか?

山本千晴さん(以下、山本) 実は私がGBOに着任した当初は、評価制度が抽象度の高いものでした。ですが、メンバー誰もが強い貢献欲求があり、もっと個々の成長に対して報いることができるように新たな評価制度を導入したいと考えるようになりました。私は元々グリー本社の人事部長をやっていて、そこで人事や評価の制度設計をしていたんです。

ただ、いわゆる一般的な評価制度は、コンピテンシー等が定義されて、それらをバランス良くどの要素も達成することが求められます。でもGBOは平均的に何でもできる人たちの集団ではありません。チームワークが苦手な人もいれば、リーダーシップをとるのが得意な人もいて、個々人の強みは実にさまざま。そこで平均点を求めてしまうことは、多様性を認めるという考えにそぐわないし、すごくつまらないなと思ったんです。

――型にはめた評価制度ではなく、それぞれの特性に基づいて評価する、ということですね。

山本 せっかく強みがあるのだから、その強みを伸ばしてほしいと考えています。もちろん、会社として業績を上げるための行動特性は掲げますが、その中で自分はどれが強みか。弱みがあるとしたら克服したいか。他の強みを見つけて強化していきたいのか――。などを、目標設定の中でマネージャーとメンバーが対話し、それに基づいて、評価においてフィードバックしていきます。

自分が得意とすることが仕事にも繋がると成功体験を積みやすいですし、一人ひとりの貢献意欲も増して、会社としてもいいサイクルが生まれます。これは本来的には、障がいのあるなしにかかわらず、働く人たちみんなにいえることかもしれません。