多くの人が憧れるブランド「エルメス」。スタイリスト福田麻琴さんもそのひとり。“憧れ貯金”(理想のアイテムに“出会った”とき、すぐに買えるようにコツコツ続けている貯金)をしながら長年かけてバッグやスカーフなどエルメスのアイテムを買い揃え、大切に、ときにあえてラフに、愛用し続けていると言います。なぜ、それほどまでにエルメスに惹かれるのでしょうか。エルメスを始めとする、私的な名品を紹介した新刊『MY BASIC,MY ICONS 10 年後も着たい服』も好評な福田さんに、その理由を尋ねました。
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エルメスがトレンドになることはあっても、エルメスがトレンドを追うことはない
「ブランドの歴史、理念、遊び心のあるデザイン、プロジェクト、職人のものづくり……全部好きです。美しい馬のオブジェから子供の落書きみたいなイラスト、手の届かないブランドと思いきや、急に身近に感じる時も。一体なぜこんなにもエルメスが好きになったのか。
このブランドが大事にしているものが、人とか、動物とか、自然とか…私達のとても近くにあるものだと思うから。だからとてもあたたかく感じるし、それが逆に最高にエレガントに感じる。私が勝手に感じているコンセプトですが、きっと本当。だから世界中の人をこれだけ長い間魅了できているんだと思います」
そしてもうひとつ、エルメスに惹かれる理由として挙げてくれたのが「トレンドがないところ」。
「エルメスのスカーフの柄が、Hのバックルがたまたまトレンドになることはあるけど、エルメスがトレンドを追うことはない、そんな印象。エルメスは何を選んでも正解なんです。何を選んでも名品です。名品とは古くならないもの。現に、私のエルメスのバッグはほとんどのものがヴィンテージです。ヴィンテージとして新品以上に価値を発揮するのは本物の証拠。むしろ新品より付加価値があります」
ジェーン・バーキンのようなナチュラルでチャーミングな人になりたい…そんな思いがきっかけて購入した“バーキン”。パリコレの会場でフランス人女優がネイビーのコートに斜め掛けしていて目を奪われた“コンスタン”。あまりにも履きやすくて2足買ったというローファー。それぞれにひと言では語れない思い出があるといいますが、中でも印象深いのが、“ファースト”エルメスとなったスカーフとの出会いです。
「初めて出会ったのはシャルル・ド・ゴール空港。確か(笑)。もう何十年も前の話なので少々うろ覚えですが、その頃は旅先でスカーフを買うのが楽しみのひとつでした。その国から得たインスピレーション、新しい感覚、そんなものをスカーフの柄に込めて、思い出として集めていたんです。時にはモノクロのシックなスカーフを、時には華やかなピンクの花柄を。スカーフを眺めるたびに、旅先での出来事を思い出したり、ハプニングを思い出したりして懐かしい気持ちになります」
もちろん、“思い出”として大切にしまっているわけではなく、「首に髪にバッグに……シンプルコーデを盛り上げてくれる」アイテムとして、日常的にスカーフアレンジを楽しんでいると言います。
「スカーフが好きになったのもエルメスの影響です。馬が好きになったのももしかしたら。今はバッグももちろんですが、乗馬のアイテムがとても気になります。いつか大きな森を馬に乗って颯爽と走りたい、そんな夢ができました。まだまだ乗馬のスキルが足りませんが、きっとその時はエルメスのスカーフをしたいな」
エルメスの数々の名品を始め、スタイリスト福田麻琴さんが愛する永遠の定番について綴った新刊が発売になりました。詳しくは下記からチェックしてみ下さい。福田さんならではの優しい視点で綴られる文章と美しい写真も必見です。
<Information>
恋人のような、親友のような、家族のような
そんな服との出会い方
『MY BASIC,MY ICONS 10年後も着たい服』
福田麻琴著 定価 1400 円+税
発行 イースト・プレス
スタイリスト歴20年、ミモレでもおなじみの福田麻琴さん。たくさんの服と出会ってきた福田さんが本当にこれだけは廃ることがないと感じる「永遠の定番アイテムたち」を紹介した一冊。なぜ定番なのか、なにがそんなに人を惹きつけるのかを、出会いのエピソードなどをまじえながら綴ります。
登場するアイテムは、「アニエスベーのカーディガンプレッション」「プチバトーのカットソー」など手にやすいものから、「シャネルのツイードジャケット」「サンローランのテーラードジャケット」など高級ブランドの名品まで、価格も時代も問わない、福田さん独自の視点で選び抜いたものだけ。
着るだけで幸せになり、はくだけで自分らしくいられる服に出会ってみませんか?
撮影/渡辺謙太郎(人物)、
魚地武大(TENT/静物)
構成/幸山梨奈
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